京セラは、2023年5月24日から26日までパシフィコ横浜にて開催された「人とくるまのテクノロジー展2023」に出展し、独自の技術を活用したデモや、カーエレクトロニクス関連部品・製品などの展示を行った。
中でも注目だったのは、ドライバーの疲労・眠気兆候を検知できるデモカーだ。
これは同社が開発している「高精度ミリ波心拍センサ」を活用し、運転中のドライバーの自律神経を分析できる機能をもつデモカーで、呼吸や心音、心拍数、心拍間隔、疲労度などが測定できる。
このセンサの強みは、非接触という部分にある。人の心拍や呼吸などを測定できるシステムの多くは接触型であり、機器装着の煩わしさや測定の誤差が生じる可能性がある点、計測場所に制限がある点などに課題があったという。例えば、車内のシートに埋め込む接触型センサであれば、振動により臀部が浮いたりすることで誤差が生じる可能性がある。
そこで、京セラは非接触のミリ波センサを開発し、ノイズを最小限に抑え、心拍に伴う微小な胸部振動を高精度に検知。車両走行中の振動下でも心拍数の測定を可能なものにした。
開発の中で、センサ全体の低ノイズ化が課題となっていたが、京セラ独自の材料技術と信号処理技術を結集し、高い精度で振動を検知できるようにしたという。
また、これら心拍や呼吸などを測定できる電子機器の多くが心拍から派生した脈拍をみているものが多いのに対し、京セラのミリ波センサは心拍に伴う微小な胸部振動 (心音、心拍間隔)を検知することができるという点にも違いがあるのだとブース担当者は語っていた。
自律神経からドライバーの心身の状態や感情を分析する技術は現在研究中であるとしているものの、分析をもとに表示される疲労度で自身の状態が数値として分かるようになっている。疲労度は、だいたい1~8を示すとされ、休憩などのアクションをとるのは運転者の判断に委ねられている。
今回のデモカーでは、1分間安静にした状態を保ち、結果が横のモニターに表示される仕組みが採用されていたが、将来的には運転中の信号待ちの際に運転者前のモニターに状態が表示されるようになることを考えているという。脈拍より正確な心拍変動の計測を可能にするこのミリ波センサを活用すれば、不慮の事態で生じる交通事故をより防ぐことにつながることが期待される。
基盤技術を強みとしている京セラは今後も、ミリ波センサのデータ分析および活用するためのAI技術の研究開発を進め、あらゆるソフトウェアモジュールとの組み合わせにより、さまざまなソリューション提供を目指すとしている。