フォロフライ、丸紅、太陽インキ製造の3社は5月30日、プレスセミナーを共催し、拡大が続く電気自動車(EV)市場に対する現状認識などの説明を行った。

最初にゲストスピーカーとして登壇したフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの代表を務める柏尾南壮氏は、「自動車:電子部品最後のフロンティア」と題し、電動化が進む自動車市場全体を俯瞰する形で、その中で車載半導体や電子部品が、自動車のさまざまなコンポーネントで活用が進められており、その数を増やしていることを強調したほか、自動車はニーズにマッチした駆動系を選択する必要があり、EVにマッチするニーズの1つとして商用車が挙げられるとした。

  • 柏尾南壮氏
  • 柏尾南壮氏
  • 自動車市場における半導体・電子部品の現状説明を行うフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ代表の柏尾南壮氏。普通乗用車が搭載している電子部品の数は平均して1台あたり1万5000点ほどと言われている。ノートPCが3000点と言われているので、実にノートPC5台分の部品が使われるということになる

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    フォーマルハウトが展示したTesla Model 3のドライブコンピュータの基板

物流のラストワンマイルでのEV活用を目指すベンチャー

その商用車向けEVを手掛けるのがフォロフライ。物流事業者なども国のCO2削減方針を受けた荷主などから配送トラックのEV化が迫られることが増えてきているものの、車両価格が高かったり、航続距離に不安があったりといった課題があり、なかなか普及が進まない実情がある。

同社は、そうした状況を改善し、物流倉庫から自宅までの多くが100km圏内に収まるラストワンマイルでのEV普及を目指すべく、京都大学(京大)発のEVベンチャーGLMで代表取締役社長を務めた小間裕康氏が2021年に設立し、代表取締役社長を務める京大発ベンチャー。

  • 小間裕康氏

    フォロフライの代表取締役社長を務める小間裕康氏

  1. ドライバー不足の物流業界において、積載量1tクラスにすることで普通自動車免許で乗車可能な車種を用意
  2. 航続距離を他社の150kmほどというのの倍となる300kmほどに増加。中国製バッテリーを採用することで価格上昇を最低限に抑制
  3. 水平分業体制を図ることでガソリン車と同等価格での提供を実現

という基本戦略を掲げ、ファブレスによるビジネスを展開(自社で開発、車体製造はパートナーに委託)。2021年10月には日本で初めての1トンクラスの宅配EV車両にて営業ナンバーを取得。現在までに50社ほどの物流業者にサンプル車の提供を実施してきたほか、運送業大手SBSホールディングスが合計1万台の導入を決定済みで、2023年6月より量産出荷のめどが立ったという。

  • フォロフライの第1世代車両

    フォロフライの第1世代車両。バンタイプの「F1 VAN」の概要。ベースは中国メーカーのもの。そこに日本で必要な安全機能の強化などを施しす形で販売を行うとする

また、第1世代のバンタイプの「F1 VAN」に加え、第2世代として、荷台を顧客ニーズによってカスタマイズ可能な平ボディタイプを採用した「F1 TRUCK」の開発も進行中。併せて、VANとTRUCKに横滑り防止機能、パーキングロックシステムなどの安全機能に加え、チャデモ対応を標準装備としたF1VS、F1TS、ならびにF1VSを4人乗り仕様に変更したF1VS4の発売も開始することを発表したほか、F1 TRUCKの荷室部分を両備グループと協力して国内で生産していくことも明らかにした。「荷室の生産を国内に切り替えることで海外からの輸送費のカットと同時に品質の向上、部品の変更なども併せて進め、年間1000台ほどの販売まで育てば国内生産のメリットが出てくるとみている」(フォロフライ小間氏)と、国内での生産に意欲を見せる。

  • 第2世代の「F1 TRUCK」
  • 第2世代の「F1 TRUCK」
  • 第2世代の「F1 TRUCK」。荷室制作を国内で行うことで輸送コストの低減と品質向上の両立を目指すとする

さらに、「EVの普及のためにはインフラをワンストップで提供していくことが必要。EVのインフラとしては、充電、バッテリー交換、フリートマネジメントなどがあるが、こうした分野こそが水平分業のビジネスモデルを活用して解決できる部分。現在、丸紅と協力して、こうしたサービスモデルを世界に売り出そうとしている」と、単なる車両販売だけでなく、その後ろにあるソフトウェア部分にも注力していることをアピールする。

  • フリートマネジメントなどのソリューション提供にも踏み込んでいく

    単なる商用EVを販売するのではなく、水平分業でパートナーと協力してフリートマネジメントなどのソリューション提供にも踏み込んでいくとする

CASE各領域で最適なパートナーとの協力体制を構築する丸紅

フォロフライとフリートマネジメントなどで協力する丸紅は、フォロフライとのパートナーシップに至った背景について、「物流事業者や荷主と話を交わす中、脱炭素に対する要求が強まってきており、特に上場企業ともなれば明確に脱炭素に対するマイルストーンを出す必要に迫られることとある。しかし、その一方で温室効果ガスを排出しない適切な車両がないという問題があり、そこにフォロフライの車両を持ち込みたいということで提携に至った」(丸紅 産業システム・モビリティ事業部の佐倉谷誠氏)と説明する。

  • 佐倉谷誠氏

    丸紅 産業システム・モビリティ事業部の佐倉谷誠氏

丸紅は総合商社であるため、何もフォロフライだけにこだわる姿勢は見せていない。佐倉谷氏も「CASEそれぞれの領域で適切なパートナーと協力していく」ことを強調。5月19日にはパナソニックホールディングスとの間で商用EV向けフリートマネジメントサービスの提供を目的とした合弁会社「e-Fleet Management Co.(eFMC)」(仮称)を設立することで合意したことなどを説明した。

「商社という中立な立場を活用した商用EVの管理サービスを提供し、物流業界の支援を図っていく」ことがこのeFMCの設立目的となるが、その背景には、ビジネスでEVを活用しようと思えば、本当に数十台のEVが充電できているのかをシステム的に統合管理する必要があるものの、日本でそれがメーカー問わずにできるシステムが存在しないことがあったためだという。

そのためeFMCでは、車両や充電器などのリースの提案や将来的なEV導入計画の策定支援をいった導入から、日々の充電サイクル、充電状況の把握に伴うバッテリーの状態ログの取得、それに伴うリース満了後に戻ってきたEVのバッテリ性能把握からのEV車両およびバッテリの価値向上まで統合的な価値提供を目指すとする。

「バッテリの状況を毎日取得・把握することで、ビッグデータとしての寿命予測が可能になる。それにより電池寿命を延ばす充電なども可能となり、結果的にリースアップ時のEVやバッテリに価値を設定することが可能となる。こうしたシステムは基本的に、顧客の立場となって必要な機能を開発していく予定であり、大手物流事業者などと協力していく」(同)とするほか、すでに海外展開にも着手。シンガポール交通大手SMRTグループの交通輸送サービス企業との間に新規事業開発に関する覚書を締結。開発するシステムをASEAN地域における主に日系企業に向けて提供していくことも検討しているという。

クルマの電動化で重要性が増すソルダーレジスト

こうした丸紅やフォロフライ、パナソニックなどの取り組みで期待される日本でのEVの普及促進。ADASや自動運転技術の進化も含め、車載関連部材の増加に伴い、それらを搭載するプリント基板の面積も増加。ガソリン車で用いられるプリント基板面積を1.0とした場合、EVでは1.5、ハイブリッド(HV)やプラグインHV(PHV)では2.0と増えるとのことで、付随してプリント基板に塗布されるソルダーレジストの量も増加傾向にあるという。

  • ソルダーレジストの消費量も増加していく

    自動車の電動化が進むことに加え、ADAS/自動運転といった新機能が搭載されることもあり、それらの機能を搭載するプリント基板の使用量も年々増加。併せてそこで用いられるソルダーレジストの消費量も増加していくことが見込まれている

そうした自動車の電動化に伴う市場拡大の恩恵を受けている1社がソルダーレジスト市場でシェア6割を握る太陽インキ製造だという。

  • 角谷武徳氏

    太陽インキ製造 ビジネスディベロップメント部の角谷武徳氏

プリント基板におけるソルダーレジストの役割は、プリント基板の表面を覆うことによる、不要部分へのはんだの付着防止や、ほこりや熱、湿気などから回路パターンの保護、回路パターン間の電気絶縁性の維持などが挙げられる。実際の販売先はティア2のプリント基板メーカーとなるが、自動車メーカー(OEM)やコンポーネントを供給するティア1など各社で自動車に対する設計思想が異なり、プリント基板に求められる性能も違ってくる。そのため、同社でもそうしたOEMやティア1からのニーズ吸いあげを行い、求められるソルダーレジストの開発を行うことで業績を伸ばしてきたとする。

  • 自動車のあらゆる分野でプリント基板が用いられるようになってきた
  • 自動車のあらゆる分野でプリント基板が用いられるようになってきた
  • 自動車のあらゆる分野でプリント基板が用いられるようになってきたため、同社のソルダーレジストもその潮流に乗って消費量が拡大。それぞれの適用分野の将来ニーズに対するフィードバックをティア1やOEMから受けることで、マッチした製品開発も進められる体制が構築されているという

ひとえにプリント基板と言っても、片面基板の1層、両面基板の2層といったシンプルなものから100層を超す多層基板まで多岐にわたり、また適用環境も異なってくる。自動車分野では例えば動力系に近いインバータ用途の場合、150℃や-40℃といった過酷な環境にも耐えて正常動作できる必要がある。もし、そうした仕様に見合わないソルダーレジストが用いられれば、最悪の場合、プリント基板が炎上することもある。同社では、故障モードの分析などから、腐食からショートが生じることなどの知見を得て、それを防ぐソルダーレジストの開発なども行っている一方、適切なソルダーレジストの使用に向けた自動車業界への啓もう活動なども進めているという。

OEMメーカー側からも、ソルダーレジストの違いでプリント基板の信頼性が大きく異なるといった論文が発表されるなど、その重要性が近年、指摘されるようになってきており、同社でも引き続き、新技術・製品開発を進めつつ、そうした啓もう活動も進めていくことで、拡大するEV市場に適した製品供給などをはかっていきたいとしている。