NTT東日本は5月24日、マネージドローカル5Gサービス「ギガらく5G」を活用し、製造・物流現場において、「搬送・検品工程」を担う複数の機器類のギガらく5Gへの接続検証を実施するとともに、ギガらく5Gを通じた製造実行ソフトウェアによる各種機器類の一元管理を実現するための実証を自社施設を行うことを発表した。
5月24日~26日に東京ビックサイト(東京都江東区)で開催された「ワイヤレスジャパン 2023」では、この実証設備の一部が展示され、デモが行われた。
デモは、製造業の工場を想定したもので、工場の建屋間を無人搬送車「eve auto」が移動して荷物を運び、建屋内のは無人搬送車「Akatsuki」がその荷物をピックアップしてAI検品システム装置である「Impulse」に運搬。「Impulse」の検査が終了すると「Akatsuki」が再び製品をピックアップし、出荷場所に運ぶというものだ。
次の工程の開始指示などは、NTT東と新エフエイコムが共同開発した製造実行ソフトウェア「物流あんどん」で一括管理されている。
検査作業の終了は実際に人がボタンを押して操作し、それが「物流あんどん」に伝えられ、次の工程である「Akatsuki」によるピックアップ輸送が開始される。
各装置間の通信は、「ギガらく5G」のローカル5Gを使って行われている。
製造・物流業種においては、工程変更が頻繁に行われるが、その際に各工程を構成する機器類を繋ぐ有線ケーブルの配線・配策、それに伴う配管の新設・撤去が課題になっている。
今回のデモ環境は、有線をローカル5Gに置き換えることで、これらの課題を解決しようというものだ。ローカル5Gを利用することで工程変更によるダウンタイムを短くし、生産性を向上できるという。
NTT東日本では、今年度いっぱいで、製造・物流現場の各種機器類におけるギガらく5Gの対応や「ギガらく5G」を通じた製造実行ソフトウェアによる各種機器類の一元管理について実証で確認する予定だ。今後は、組み立て工程の装置も追加し、実証を行っていく。通信自体は問題なくできるが、各機器の状態や作業の進捗を把握し、工程全体をいかにスムーズに進めていけるかが検証のポイントだという。
「ギガらく5G」の広域LANソリューション
同社がローカル5Gの活用で注力している別の用途が広域LANで、ワイヤレスジャパンでも提示されていた。
コンビナートや大きな工場、空港、プラント施設などから引き合いがあるソリューションで、こういった施設は臨海にあり、携帯キャリアの電波が入らないこともあるという。そのため、自前で通信環境を整えたいというニーズがあり、ドングル型の送受信機も出てきており、これらを使うとタブレットやPCでも利用できる。
Wi-Fiでもいいのではないかと思えるが、Wi-Fiだとより多くのアクセスポイントが必要になり、電波干渉のリスクもあるという。例えば、600×600mの敷地の場合、Wi-Fiの場合、144機のアクセスポイントが必要になるが、ローカル5Gであれば9機の基地局で済むという。 また、アップリンクで400Mbpsという高速性も魅力だという。
成田国際空港でもNTT東日本等が参画するコンソーシアムで進めるローカル5G等を用いた複数台遠隔型自動運転バスの実証の実施といった無線通信基盤としてのローカル5Gの活用の検討を進めている。
5月19日には、空港の無線通信基盤であるTETRAと「ギガらく5G」で構築したローカル5Gシステムの相互接続に成功したことを発表した。これにより、ローカル5G対応のスマートフォンとTETRA端末との間や、スマートフォン同士の閉域網での音声通話を可能となった。
今後同社は、空港をはじめ広大な敷地を持つ工場・倉庫等における実業務へのローカル5Gの活用範囲拡大と無線通信環境の高度化に向けた具体的な提案を実施していくという。