高齢期に向けた健康維持のためにはタンパク質の比率が25%から35%(カロリー換算)の食事を摂ることが最適とみられることを、早稲田大学などのグループがマウスを使った実験で明らかにした。現在の日本人の平均的な摂取比率は13.8%で、肉や魚、豆類といったタンパク質をもう少し多く食べた方が良い可能性を示しているという。
タンパク質と炭水化物、脂質の三大栄養素をバランスよく食べることが健康につながる。早稲田大学人間科学学術院の近藤嘉高講師(基礎老化学)らは「成長期から高齢期までそれぞれの時期に最適な栄養バランスがあるのではないか」と考え、ヒトでは20歳前後に当たる若齢マウス(6月齢) と、40代後半にあたる中齢マウス(16月齢)にタンパク質がカロリー換算で5%、15%、25%、35%、45%ある餌を2ヶ月間与えた。
各餌の脂質の割合は固定し、カロリーをそろえるために炭水化物の比率を変え、体重や食べた餌の量、肝臓中の中性脂肪やコレステロール量、血糖値などを調査。日本人の平均的摂取比率に近いタンパク質比率15%の餌と他の比率の餌を食べたマウスの状況をそれぞれ比較した。
体重と食べた餌の量については、5%しかタンパク質が含まれていない餌を与えたマウスは齢に関わらず、15%の餌を食べたマウスに比べて食べる量は増えたのに体重は減っていた。体内のタンパク質量を維持するために食べる量を増やして対応したと考えられる。一方、45%の餌の場合、食べる量は減ったものの、体重は変わらなかった。
肝臓を調べると、齢に関わらず5%しかタンパク質が含まれていない餌を与えたマウスでは、中性脂肪量や総コレステロール量が多く、肝臓の切片には多くの脂肪滴が見られ、軽度の脂肪肝だった。一方、タンパク質比率35%の餌を食べたマウスの中性脂肪量は比率15%のマウスより少なかった。
血糖値については、タンパク質比率25%と35%の餌を食べたマウスは15%の餌を食べたマウスよりも低い値だった。しかし、45%の餌を食べたマウスの血糖値は25%や35%より高くなり、15%のマウスと差がなかった。
ヒトの高齢者に相当する高齢マウスでの実験はできていないが、肝臓の中性脂肪量や血糖値などの観点から、高齢期に向けた若齢期から中齢期ではタンパク質比率が25~35%の食事が最も健康的だった。近藤講師は「マウスの実験結果をヒトにそのまま当てはめるのは早計だが、現在の日本におけるタンパク質の摂取比率(13.8%)よりは多めにタンパク質を食べる方が健康的な高齢期につながるのではないか」としている。
研究は、東京都健康長寿医療センター研究所や東京大学、ニチレイフーズと共同で行い、米国の老化学雑誌「GeroScience(ジェロサイエンス)」の電子版に4月28日付けで掲載された。
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