ジーフィットは5月24日、法人向け為替相場予測/支援システム「TRADOM(トレーダム)」の提供を開始すると発表した。同日にはハイブリッド記者説明会が開かれ、同サービスの詳細とともに今後の展開が紹介された。

  • 「TRADOM」の利用イメージ

    「TRADOM」の利用イメージ

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TRADOMは、企業の為替予約や為替ヘッジ、外貨管理のための機能を提供するクラウドサービスだ。400を超える経済指標や専門家・機関投資家の為替見通しを学習した数百のAIが、トレンド予測に基づく確率分布により為替相場を予想し、為替ヘッジに関するガイドを提供するという。

外貨管理機能では、外貨での支払いや外貨残高を管理するほか、為替予約と外貨支払いをひもづけることも可能だ。

このほか、担当者、承認者、財務部門担当者などユーザー権限管理のためのガバナンス機能や、急激な相場変動時のアラート機能も実装しているという。今後は銀行システムとのAPI連携機能も提供する予定だ。

  • 「TRADOM」で提供する主要機能

    「TRADOM」で提供する主要機能

同サービスは定額課金のサブスクリプションモデルにて提供される。利用料金は個別見積もりとなるが、サービスの利用目的と企業規模・年間取引額などに基づきBasic、Professional、Enterpriseの3つのプランを展開する。今回、提供が開始されたのはBasicプランだ。Professionalプランは2023年末までに、Enterpriseプランは2024年中に提供する計画だ。

  • 3つのサービスプラン

    3つのサービスプラン

ジーフィット 代表取締役 CO-CEO & CSMO(Chief Strategy & Marketing Officer)の阪根信一氏は、「一般的に、企業の為替予約では、社長や財務責任者が大手銀行のレポート、公開されているアナリストの意見を参考にしながら検討しているが、さまざまな見解があるため判断に困るケースも散見される。TRADOMは数百体のAIが数カ月後の為替のトレンドを予測し、その予想を為替予約に活用するというものだ。これまで、人がデータを集めて行っていた為替の予想にAIを活用し、企業が為替リスクコントロールに主体的に取り組めるよう支援したい」と語った。

  • ジーフィット 代表取締役 CO-CEO & CSMO 阪根信一氏

    ジーフィット 代表取締役 CO-CEO & CSMO 阪根信一氏

AIの学習には、ChatGPTにも利用されているLLM(Large Language Models、大規模言語モデル)であるTransformerが利用されている。

「為替の予測ではさまざまな経済指標の推移や関連性、各指標間にある文脈を分析する。それらの分析にTransformerが有効なのではないか、と当社のデータサイエンティストチームが注目したのがAI開発のきっかけだ」と阪根氏。

同サービスの過去4年間(2019年~2022年)のバックテストでは、為替予測は75%の正答率を出せているそうだ。また、日本企業によるAWS(Amazon Web Services)の支払い代金の為替ヘッジ効果を検証したバックテスト(年間の支払い総額が100万ドルと想定)では、ドル円の動向が円安傾向に動き出した2022年について、全く為替ヘッジを行わなかった場合と比較して、同サービスに基づく為替ヘッジを行った場合は年間の支払いを1456万円のヘッジ効果を確認できたそうだ。

  • 「TRADOM」の為替ヘッジ効果のバックテスト結果

    「TRADOM」の為替ヘッジ効果のバックテスト結果

AIによる為替のトレンド予測の精度を高めるために、同社では今後もAIの数を増やし、1000体を超えるAIを通貨ペアごとに実装する目標だという。