日立製作所は5月24日、Lumadaソリューションの「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」を日立ハイテクの半導体製造装置を生産する山口県下松市の笠戸地区へ2022年4月に導入し約1年間運用した結果、変化に即応する生産計画立案の自動化を実現したと発表した。生産計画立案に要する時間は従来の5分の1程度に短縮でき、より長期間にわたる生産計画の立案・調整が可能になった。

  • 日立ハイテク笠戸地区の生産現場

日立ハイテク笠戸地区では、多様な機種・仕様の半導体製造装置をグローバルの先端半導体メーカー向けに生産しているという。急速な技術進化や市場ニーズへの対応と高い品質・精度が求められる中、ユーザー企業の多岐にわたる要望に応えるべく、個別仕様の開発・生産をしている。

生産にあたって、従来は納期、部品、設備・現場の制約、案件ごとの進捗状況など多様な条件を網羅的に考慮しながら、計画を立案していたという。

  • 業務改善のイメージ

こうした状況の中で同地区では、製造業を中心に数多くのユーザー企業へ提供実績があるという同サービスの導入検討を、2020年に開始。

両社は、新しい価値や発想を生み出すという日立独自のデザイン・アプローチを活用して計画立案に関する一連の業務の可視化に加えて、現場の各種データや制約条件を掛け合わせてデジタル化し、AI(人工知能)と数理最適化技術を用いて計画業務のノウハウを進化させることで、最適化と自動化を実現した。

これにより、同地区の生産管理部門が生産業務全体を先導し、営業、調達、製造部門に対して、将来を見据えた先手の生産計画情報を提供可能になり、ユーザー企業の計画的かつ安定的な半導体の生産・供給に貢献しているとのこと。

また同地区では、同サービスの稼働後にSAP S/4HANAを導入する計画があったが、SAP S/4HANA導入により、受注から納品までの業務が標準化・高度化する一方で、顧客の要望に対応する従来の個別調整は難しくなるという。

これに対応するため、日立はアウトプットを早期に出力し、将来の運用業務を都度具体化しながらシステム化していくアジャイル開発を適用し、SAP S/4HANA導入後もシームレスな同サービスの運用を目指した。

2023年4月にSAP S/4HANAと連係させた同サービスを運用開始し、受注から納品までの業務の標準化・高度化による全体最適化が進み、各部門での部分調整が難しくなる那珂でも顧客の要望に応える生産計画の自動立案を可能にしたといい、同地区全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の実現に貢献したとのこと。

両社は今後も、Lumadaソリューションと日立ハイテクの最先端のプロダクトを掛け合わせ、半導体メーカーのユーザー企業の開発期間短縮・生産性向上などの課題解決に取り組み、デジタル社会を支える産業の持続的な発展と人々のQoL(Quality of Life)の向上に貢献していくとしている。