NTTデータグループのコンサルティング企業であるクニエは5月23日、同社が実施した、メタバースの事業化検討に関わったことのあるビジネス・パーソンを対象にしたメタバース・ビジネスの実態調査をレポートとして公開した。これによると、事業化の成否が判明した取り組みのうち91.9%が事業化に失敗しているという。

  • レポートの表紙

同調査はメタバース・ビジネスの取り組み状況の把握と、事業化の成功・失敗要因の抽出を目的に、1月11日~13日にかけて全国一般企業従事者のうち、事業化に向けたメタバース・ビジネスの検討に携わった経験者を対象にインターネットにより実施したものであり、有効回答者数はスクリーニング調査が7万人、本調査が500人。

メタバースに取り組む日本企業が多く見られる一方で、現時点で事業化までたどり着いた企業は数少なく、多くの企業が事業化に失敗しているという。

しかし、自社の事業環境を鑑み、メタバース・ビジネスの実現を模索している企業も一定数存在しており、同社はメタバースそのものは今後一時的に幻滅期を迎えながらも、メタバース・ビジネスを展開する企業は緩やかに増加していくと考えている。

  • メタバース・ビジネスの成否

同調査では、メタバース・ビジネスの取り組み状況に関する設問に対し、「事業化の社内審査がおりた」「事業として既に運営している」との回答は事業化に成功、「事業化に向けた検討が停滞している」「検討自体が中止された」との回答は事業化に失敗と定義した。

これによると、成功は8.1%、失敗は91.9%だったという。

同レポートでは失敗事例を成功事例と比較することで、事業内容・ビジネスモデル、検討プロセス、組織・体制の観点から事業化に失敗するメタバース・ビジネスの特徴を13種類分析した。

企画内容・ビジネスモデルでは、既存ビジネスの延長線上の位置付けやメタバースである合理性が説明できないこと、検討プロセスではターゲットや課題・ニーズの明確化が不十分なことや事業リスクの分析と撤退条件の設定が曖昧なため、組織・体制では新規事業開発・技術領域・デジタル領域の専門性を持つ人材の不足や社内外の支援が得られず孤軍奮闘を余儀なくされることを指摘している。

同社は調査結果およびコンサルティング実績から導き出した提言として、メタバースに取り組む意義を見つめ直し、不明確なら撤退を視野に入れることおよび、ユースケース起点ではなく、顧客の課題・ニーズ起点で検討することを挙げている。