NTTとダンディライアンは5月20日、サーキットを高速周回中のレーサーの瞬目(まばたき)が極めて再現性高くコース上の特定位置で生じることを発見し、この瞬目パターンの背後にドライバーの生理学的要因と運転行動に伴う認知状態変化が関与していることを明らかにした。この研究の詳細は、米国東部時間5月19日、米国科学誌「iScience」にオンラインで掲載された。

  • フォーミュラカー実走行中の瞬目パターン

    フォーミュラカー実走行中の瞬目パターン

今回、ダンディライアンが運営するレーシングチーム「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」の協力のもと、全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦する3名のトップドライバーを対象に、フォーミュラカーでサーキットを実走行中の心身の状態を多面的に観測し、その高度なドライビングスキルの背後にある無自覚的な脳機能の一端に迫る研究を実施した。

サーキットを実走行中のドライバーの瞬目を車両の挙動と同時に計測した結果、ドライバーはコース上の特定の位置付近で集中的に瞬目し、周回を重ねてもその位置の再現性が非常に高いことを発見した。

さらに、この瞬目のパターンが、ドライバーの瞬目頻度、ドライバーのラップタイムの速さ、車両の前後左右の加速度と強く関連することが明らかになった。ドライバー毎に瞬目頻度が大きく異なるにも関わらずコース上の瞬目位置はドライバー間で類似し、車両加速度が小さい時に偏っていたという。

逆に、車両が大きく減速、または横方向に加速しているときには瞬目が強く抑制され、コーナーリング時の急峻な認知状態の変化が瞬目の抑制/発生に反映されていたという。さらに、ラップタイムが早い時ほど瞬目パターンは明確で、ドライバーの運転への集中度が瞬目パターンに反映されていることも示唆される。

  • 運転中の瞬目パターンを決める3つの要因

    運転中の瞬目パターンを決める3つの要因

この結果は、自然行動中の瞬目パターンがヒトの認知状態変化を読み取るための重要な生体指標になることを示し、ヒトのデジタルツイン構築に向けた個人の内面のデジタル表現や高度なスキルの伝承などに貢献するとしている。