Claris International(Apple)は5月23日、2020年5月以来のメジャーバージョンとなるローコード開発プラットフォームの最新版「Claris FileMaker 2023」を発表した。すでに、米国等では4月26日に発表されており、日本語版と韓国語版が今回追加で発表された。
FileMakerはこれまで「FileMaker 18」「FileMaker 19」のように、製品名にはメジャーバージョンの番号が付与されてきたが、今回からバージョン番号の代わりに発売年が付けられている。
これについて、Claris International プロダクトマネージャー 森本和明氏は、「ソフトウェア業界の多くの製品が採用する形式であり、発売年を付けることによって、ユーザーが現在使っているバージョンが最新のものかを直感的に判別できる。ただし、内部的には20というバージョン番号(20.X.X)を持つことになる。開発者にとっては、こちらのほうが重要になる」と説明した。
なお、FileMakerは「FileMaker 18」まで、メジャーバージョンアップによって多くの機能強化を行ってきたが、「FileMaker 19」から細かな機能強化を繰り返し行う「反復リリース」に変更されたため、メジャーバージョンで多くの新機能を一斉に追加するということはなくなった。
「『FileMaker 19』では、顧客やパートナーの要望をいち早く取り込んで反復リリースを繰り返してきた。『FileMaker 2023』は、『FileMaker 19』からの反復リリースの延長線上にあり、今後も反復リリースを継続していく」(森本氏)
FileMaker Proの新機能
FileMaker Proの新機能としては、新たに2つのスクリプトと4つの関数が追加されたほか、Open SSL 3.0への対応、OAuth 2.0 でのメール送信が可能になった。
新たに追加された「OnWindowTransaction トリガ」では、ユーザーが行った作成、変更、削除というイベントをキャッチして、自動で変更履歴ログを作成できる。
スクリプトでは、「Claris Connect フローをトリガ」も追加され、FileMaker Proからより簡単にClaris Connectが利用できるようになった。Claris Connectは、クラウドベースの統合サービスで、普段よく使うAppをまとめて自動化ワークフローを作成できる。
関数では、macOSのスクリーンショトからテキストを抽出する「GetLiveText関数」が日本語、韓国語、ウクライナ語に対応した。
FileMaker Serverの新機能
FileMaker Serverでは、インテルおよびARMプロセッサ上のUbuntu 22 LTSをサポートしたほか、FileMakerのカスタムAppをWebブラウザで利用できる「Claris FileMaker WebDirect」では、これまで最大600ユーザー(5台のマシンを利用した場合)が利用できたが、今回、最大1000ユーザーの同時接続(10台のUbuntuセカンダリマシンを使用した場合)が可能になった。
そのほか、これまでFileMaker Server1台あたり共有できるファイルの最大は125ファイルまでであったが、今回、上限が256ファイルに拡大された。
「これまで125を超える場合はサーバを分ける必要があったが、256に拡大されたことで、コスト削減に貢献できる」(Claris International セールスエンジニア 田中元規氏)
さらに、バックエンドインフラストラクチャのアップグレードが行われ、OData 4.01、Java 17、Node.js 18などに対応した。
また、不要なメモリを解放し、再利用できるようにするガベージコレクションをアドミンコンソールで指示して強制的に実施できるほか、スケジュールによる実行も可能になった。なお、FileMaker Server 2023の接続できるクライアントは、FileMaker ProおよびFileMaker Goの19.4.2以降になっている。
FileMaker Goの新機能
FileMaker Goでは、「GetLiveText関数」の日本語、韓国語、ウクライナ語対応、「OnWindowTransactionトリガ」の追加、「Claris Connectフロートリガ」の追加など、FileMaker Proと同様の機能追加が行われている。
FileMaker 2023のライセンス料はこれまで通りだが、ワークフロー自動化プラットフォーム「Claris Connect」のDeveloperプラン(開発者向けライセンス: 年額27,120円) が無償化された。
これまでClaris Connectには無料の評価版があったが、こちらは利用期間が15日間と短く、ある程度APIを理解しているエンジニア向けのものだったが、市民開発者にもClaris Connect利用してもらうため、無償化したという。ただ、月間APIリクエスト数は月間500までとなっている。