西日本電信電話(以下、NTT西日本)は5月22日、地方自治体および自治体を支える地域ベンダーのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を目的として、日本マイクロソフトとの協業を開始すると発表した。NTT西日本は今回の協業について、デジタル田園都市国家構想の実現に向けた取り組みとしている。
NTT西日本と日本マイクロソフトが協業
国内では少子高齢化および人口減少が進む一方であり、地方自治体においては産業の衰退や税収の減少、ひいては行政サービスの質の低下などが今後の課題となっている。これに対し、両社はデジタル化に基づく課題解決を支援するという。
人口の増加が進んでいた従前の社会においては、各自治体がそれぞれの基盤およびインフラを持ち、独自のサービスを提供できた。しかし、現在のような人口減少期では、自治体に共通するサービスや基盤、インフラ、人材を共有し、各自治体が共同で投資を行う仕組みである「共同化モデル」が必要だ。
NTT西日本は、地方自治体や大学、企業向けに、地域に密着したコンサルティングの実施やソリューションの提供など、新たな価値創造を支援してきた。一方の日本マイクロソフトは2014年2月からクラウドデータセンターの日本リージョンとして2リージョン(東日本と西日本)を設置しているほか、2022年10月にはAzureがガバメントクラウドとしてデジタル庁に認定され、地方自治体や公共機関におけるクラウドサービスの導入支援や利用促進を実施してきた。
両社は相互の強みを生かして、自治体業務のスマート化や行政サービスの高度化、効率化を支援するとのことだ。さらに、地方自治体のDX推進について、アプリケーション群の提供を通して地方自治体を支えている地域ベンダーらとも連携しながら進めていくことにも両社は合意している。
自治体のDXを支援する4つのサービス
NTT西日本と日本マイクロソフトは、市民の要望に対応する行政サービスの実現と自治体業務のデジタル化に向けて、主に以下の4サービスを展開する。
自治体システムのクラウド化にまるごと対応
2025年度の自治体情報システムの標準化への対応に加えて、ガバメントクラウドの利用や地域創生クラウドの利用に関するコンサルティング、ネットワークやセキュリティの運用を含むトータルマネージドサービスなどを展開する。自治体のさまざまな要望に対応する各種サービスを文字通り"まるごと"提供するサービスだという。
生成AIなどを活用したスマート自治体の実現支援
窓口業務のデジタル化や庁内業務の効率化を実現するために、両社はスマート自治体を実現するDXサービスも手掛ける。特に生成AIを十分に活用するべく、Azure OpenAI Serviceを軸とするサービスを展開する。
情報漏えいのリスクに対応するために生成AIにデータを学習させない、あるいは、回答の正確性を向上させるためにマニュアルなどのデータをAzure上に蓄積してその範囲で回答するなど、多様かつ複雑な問い合わせに対応可能なトータルサービスを目指すという。
自治体業務のBPO支援
地方自治体の職員不足に対応するサービスとして、NTT西日本グループのNTTマーケティングアクトProCXを中心に、複数の自治体の共同処理を行うBPO(Business Process Outsourcing:業務の外部委託)サービスを提供する。
ローコードやRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務効率化)などのツールに加えて、生成系AIを活用して生産性向上と業務効率化を支援するBPOサービスを開発するという。各自治体は人的資源を相談業務など高度な行政サービスに集中できるようになるとのことだ。
デジタル人材育成支援
デジタル人材の育成においては、全職員向けまたは管理職・現場リーダー向けの育成メニューを提供する。全社員向けにはアセスメントや基礎的な研修を、管理職・現場リーダー向けには伴走型の実践研修を展開する。
加えて、外部人材の活用を支援するサービスも開始する。業界や分野に特化したエバンジェリストだけでなく、セキュリティやシステムの標準化など個別の領域に詳しい人材の有効な活用についても支援するとのことだ。
さらに、NTT西日本は研修や人材育成の場として、同社が保有する共創拠点「LINKSPARK」およびイノベーション施設「QUINTBRIDGE」を開放する。LINKSPARK OSAKA内には新たに「Microsoft Base」を開設し、両社の連携による自治体向けの活動も実施する予定だ。
NTT西日本社長の社長である森林正彰氏は「当社は現在、Azureの資格を持つクラウドサービス上級上級資格者を100人育成している段階。本日紹介した4サービスによって自治体のDXを加速していけたら」とコメント。今後5年間で250以上の自治体に導入し、累積500憶円規模のビジネス創出を目指すとのことだ。
また、日本マイクロソフト社長の津坂美樹氏は「当社はすべての製品・ソリューションにAIを組み込んでいく方針だ。AIのパワーによって、NTT西日本との共同事業開発や、ガバメントクラウドで事業を展開するパッケージベンダーの製品開発に独自の価値をもたらせるはず。人間の営みをサポートするコパイロット(副操縦士)として、AIの活用は今後も広がるだろう」と、期待を語っていた。