デル・テクノロジーズ(以下、デル)は5月19日、ストレージソフトウェア「Dell PowerStore」(以下、PowerStore)のアップグレード版を発表し、東京都内の本社で記者会見を開いた。同社は同製品の機能強化により、ソフトウェア主導型のイノベーションを推進し、ストレージ製品群全体のサイバーレジリエンスの強化とエネルギー効率向上を進める。
米連邦政府の要求を満たすほどのセキュリティ
同社は以前からソフトウェア駆動型でのストレージの改良を進めてきた。研究開発に79憶ドルほどの資金を投じており、VMwareをスピンオフした後も2万8000件の特許を取得するなど、研究開発に積極的だ。
そうした中で今回発表したのが、セキュリティとエネルギー効率を重視したPowerStoreの最新版、「PowerStore Ver.3.5」である。同製品はサイバーレジリエンスと効率性が特徴だという。デルでストレージプラットフォームソリューションの開発に携わる森山輝彦氏は「当社がセキュリティ対策のためにできることを、できるだけ製品に入れ込んだ新版」と紹介していた。
「PowerStore Ver.3.5」は米国防総省(DoD)が示すSTIG「Security Technical Implementation Guide」の要件を満たしており、米連邦政府の要求に対応し得る基準に達しているという。
高いセキュリティ要件を満たす政府機関向けのSTIGモードを搭載しているが、一般ユーザーがSTIGモードを使うことはないようだ。しかし、米連邦政府が求める高い要件を満たす基礎的なセキュリティ機能は共通するため、同社は安心感を打ち出している。
こうしたセキュリティを実現するために、同製品はMFA(Multi-Factor Authentication:多要素認証)に加えて、変更不可スナップショットを実装している。また、管理者はPowerStoreからアクセスを直接管理でき、ファイルに対する権限設定を効率化する。
「PowerStoreは設計段階からNIST(アメリカ国立標準技術研究所)のフレームワークに準拠して開発している。初期段階からセキュリティのエッセンスを入れ込んでおり、さまざまな機能強化を実施する中で、今回STIGを満たせるようになったのでリリースに至った」(森山氏)
エネルギー効率を向上しコストの削減も支援
エネルギー効率について見ると、同製品の第1世代と比較して、1キロワット当たりのIOPSが約60%向上しているという。また、スペース当たりの容量で比較すると、第1世代から61%ほど増加している。
DevOpsワークフローも強化し、GitHubからTerraform ProviderやANsibleの自動化モジュールを落として構築可能となっている。また、「Dell Container Storage Modules」の新たなアプリケーションモビリティ機能でも、ストレージ自動化を支援する。
さらに、新版ではバックアップサーバを不要として、「PowerProtect DD」へ直接バックアップが取れるようになった。PowerStoreから直接「DD Boost」へアクセスできるようになり、PowerStoreで取ったローカルのスナップショットの差分だけを保持する。
従来はスナップショットからバックアップサーバが重複排除を行うが、PowerStoreで差分を取るだけで完結できるようになることで、最大で65:1の圧縮を可能としている。
必ずしもアプライアンスが必要なわけではなく、オンプレミス環境の仮想版(DDVE)やクラウド上のDDVEにも適応できる。Microsoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)、AWS(Amazon Web Services)に対応する。