ダイセルは5月16日、同社が開発したエッチング液からシリコン窒化膜を保護する保護材料「ナノひっつき虫」について、半導体製造の現場で使用されているさまざまなエッチング液で処理した際の保護性能を確認したと発表した。

同成果は、ダイセル スマート SBU IC/半導体 BU マーケティング部の望田憲嗣氏らの研究チームによるもの。詳細は、マイクロ/ナノエレクトロニクスに関する全般を扱う学術誌「Microelectronic Engineering」に掲載された

天然由来のセルロースを原料にした同社独自の水溶性樹脂であるナノひっつき虫は、半導体の製造工程で使用されるシリコン窒化膜に特異的に付着し、強酸性の水溶液であるエッチング液からシリコン窒化膜を保護する機能がある。また、エッチング工程の直前にノズル吐出やディッピングでナノひっつき虫を塗布するだけで保護膜を形成することができ、半導体製造工場で現在使われているエッチング液もそのまま使えることを特徴としている。

半導体製造で使われるエッチング液にはさまざまなものがあるため、今回の研究では、それらさまざまなエッチング液で処理した際の、ナノひっつき虫の保護性能の調査が行われたとするほか、ほかの水溶性樹脂との性能比較も行い、その結果を論文として報告したとする。また、シリコン窒化膜上に形成されたナノメートルオーダーの保護膜の存在を、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析によって確認したことも報告したという。

  • ナノひっつき虫がシリコン窒化膜に選択的に付着するイメージ

    ナノひっつき虫(緑)がシリコン窒化膜に選択的に付着するイメージ (出所:ダイセルプレスリリースPDF)