奈良県田原本町にある弥生時代の集落遺跡、国指定史跡の唐古・鍵(からこ・かぎ)遺跡で見つかった鳥の雛の骨がニワトリのものであることを、北海道大学総合博物館の江田真毅教授(動物考古学)らの研究グループが明らかにした。日本最古のニワトリの雛の骨であるとともに、ニワトリを何世代にもわたって繁殖させる継代飼育が弥生時代に始まったと推察できるという。

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    ニワトリの雛(左上)とメス(中央上)。中央手前にセキショクヤケイのオス、右に同じくメスがいる(北海道大学総合博物館提供)

現在、世界中で飼育しているニワトリの主な祖先は、東南アジアの森林にすむ体重1キロ弱のセキショクヤケイとされる。日本のニワトリもこのセキショクヤケイを飼い慣らしたものが持ち込まれたと考えられるが、詳細な年代は不明だった。

唐古・鍵遺跡は奈良盆地にあり、弥生時代前期から後期まで約700年間もの長い間、途切れずに集落だった。幾重もの環濠に囲まれ、面積は約42万㎡(甲子園球場10個分)で、日本最大級のムラがあったと推定されている。

同遺跡からは、弥生時代中期初頭のものと見られる溝から、幼鳥の骨4点(大腿骨1点、骨盤の骨3点)がニワトリのオスの骨とともに1995年に発掘された。形状からキジ科だとは分かったが、雛であったため種の特定まではできなかった。

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    分析に用いた大腿骨1と骨盤の骨2(田原本町教育委員会所有、北海道大学総合博物館提供)

研究グループは哺乳類などで種の同定に用いているコラーゲンタンパク質の質量分析に着目し、ニワトリと、同じキジ科のキジやヤマドリが質量分析で識別できることを確認。大腿骨と骨盤の骨を1ミリグラムずつ削り取って測定すると、ニワトリに特徴的なタンパク質の断片パターンが見られた。放射性炭素年代測定で大腿骨が紀元前3~4世紀のものと判明し、弥生時代中期初頭という年代と一致した。

雛の骨とオスの骨が同じ場所で見つかっていることから、飼育したニワトリを繁殖させてその雛を飼育する継代飼育が始まっていたと考えられるという。

国内でニワトリの骨が見つかっている遺跡は7カ所に限られ、ほとんどがオスの骨だった。肉や卵をとるために飼育や繁殖をしているとしたらメスが多いか同じぐらいになるはずだが、オスが多いことから、時告げ鳥や闘鶏として珍重されていた可能性が高いという。

今後について江田教授は、「韓国や中国大陸の遺跡などから見つかるニワトリの骨を調査して性比などを確認しながら、日本にニワトリが導入された時期や理由などを探っていきたい」としている。

研究は、東京大学総合研究博物館や田原本町教育委員会と共同で行い、スイスの地球科学の専門誌「フロンティアズ・イン・アース・サイエンス」の電子版に4月20日掲載された。

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