現在、AIやChatGPTが世界中で注目を集めています。それらのテクノロジーを支えているのは膨大なデータであり、世界中で生成、保存、コピー、消費されるデータは年々爆発的に増えています。IDCは、世界中で消費されるデジタルデータの総量が、2025年には175ゼタバイトにまで増大すると予測しています。
3月31日は、データ保護の必要性を喚起し、定期的なバックアップの大切さを再認識するための日、「World Backup Day(世界バックアップデー)」でした。データの増大に伴い、データ・バックアップの重要性は高まるいっぽうです。
個人の携帯電話やパソコンなどのデータをバックアップすることの必要性については多くの人が認識しています。しかし、組織では、日々ビジネスで使用されるデータはテラバイト、ペタバイトに及ぶため、データのバックアップ・プロセスは極めて複雑になり、不十分なまま放置されているケースも少なくありません。
しかし、サイバー攻撃や自然災害といった非常事態に備え、迅速にデータを復元するためのデータセットを準備しておくことは、組織が生き残るために解決すべき必須課題です。ランサムウェア等のサイバー攻撃も増加傾向にある今、組織のデータ保護戦略について再考すべき時が来ています。
データの消失、破損、サイバー攻撃に備える
ハードウェアの故障やサイバー攻撃、自然災害、人為的ミス、ソフトウェアのバグといった理由で重要なデータが失われた場合の影響は甚大です。業務に大きな支障が出るばかりでなく、組織のレピュテーションの低下や収益の悪化を招くおそれもあります。
データの消失や破損の備えとして、データ・リカバリ計画を立てることは不可欠です。データ・リカバリの方法としては、バックアップからの復元、データ・リカバリ・ソフトウェアの使用、データ・リカバリ・サービスの利用などが挙げられます。
現在、多くの企業がバックアップ先としてハードディスクなどの安価なレガシー・ストレージを使用しています。しかし、それらは書き込みエラーが発生しやすく、特にネットワーク接続のない遠隔地に保存されているコールド・データは復元に長時間を要します。では、データを確実に復元するには、どうすればよいのでしょうか。
バックアップのベスト・プラクティス
バックアップ・データの作成・保護には、明確な戦略が必要です。新年度を機に、組織のデータ活用戦略とともにデータ・バックアップの戦略も検討することをおすすめします。ここでは、その戦略を効果的に策定するためのベスト・プラクティスをご紹介します。
組織のニーズに合ったバックアップ・プランの確立
データの量、更新頻度、重要度といった要素を考慮します。定期的にバックアップを取ることで、重要なデータを確実に保護し、突然のデータ消失の影響を最小限に抑えることができます。
バックアップの定期的なテストの実施
バックアップが正しく機能し、データ損失が発生した場合にデータを復元できることを確認します。また、定期的にテストを行うことで、バックアップが所定の時間内に完了することを確認できるとともに、バックアップ・プロセスに関する問題へのプロアクティブな対処が可能になります。
バックアップ・データの暗号化
データの漏洩や消失は、多くの場合、不正なアクセスや不十分なセキュリティ対策に起因します。保存データと転送中のデータの両方を暗号化する必要があります。
災害復旧計画を策定
災害復旧計画は、災害やデータ損失が発生した場合に取るべき措置をまとめたものです。データのバックアップ、リカバリ手順、組織幹部の役割と責任に関する情報を盛り込む必要があります。
データの迅速な復元手段を策定
ランサムウェア攻撃や自然災害が発生した場合に、バックアップ・データを迅速かつ大規模に復元できるかどうかは、特に膨大な量のデータを扱う組織では極めて重要です。
バックアップ・データの保管場所を確保
バックアップ・データは、オフサイト、クラウド、オンサイトのいずれであっても、盗難や火災、自然災害といった物理的脅威から保護された安全な場所に保管する必要があります。
データ・バックアップのベスト・プラクティスに関する組織内トレーニング
バックアップの実行方法、バックアップ・メディアの保管方法、バックアップのテスト方法といった基本的な内容からトレーニングを実施します。これにより、一貫性のあるバックアップ・プロセスを組織全体で共有し、セキュアなデータ・バックアップの重要性に関する従業員の意識を高めることができます。
データ・バックアップは、あらゆる規模の企業にとって、包括的なデータ保護戦略の核となるものです。バックアップ戦略は、一度策定するだけでなく、定期的に見直すことも重要です。