Stack Overflowをはじめとするオンラインフォーラムは長年にわたって開発者が課題への解決策を探る上で重要な役割を果たしてきた。しかし、ChatGPTが公開されて以来、その地位をAIチャットボットに譲りつつある。
Similarwebの報道「Stack Overflow is ChatGPT Casualty: Traffic Down 14% in March」によると、2023年3月のStack Overflowのトラフィックは前年比で13.9%減少しており、これはChatGPTやGitHub Copilotの影響によるものと指摘されている。
Similarwebの調査によれば、Stack Overflowのトラフィックは2022年初め頃から緩やかに減少傾向にあったが、2023年3月には前年比13.9%と最も激しい落ち込みを見せたという。その反面、2022年11月に公開されたChatGPTへのトラフィックは、わずか4カ月で急激に増加し、2023年3月には16億人がアクセスしている。ChatGPTは開発者向けに特化したサービスではないため、Stack Overflowのトラフィックとは単純に比較することはできないが、開発者はすでにChatGPTがコーディングを手助けするツールとして有用なことに気付いており、積極的に活用していることは事実である。
コーディングに特化したAIとしては、GitHubとOpenAIが開発したGitHub Copilotがある。これは、Visual Studio CodeやVisual Studio、JetBrainsなどの開発ツールにおいて、AIによるコードの自動生成や自動補完、プログラミング言語間でコード変換などを可能にするコーディング支援ツールであり、Stack Overflowなどで調べていたようなアルゴリズムの一部は、GitHub Copilotの自動補完で簡単に実装できるようになった。
Similarwebによると、この数カ月でgithub.comに対するトラフィックは急成長しているという。このトラフィックは開発ツール上でのCoPilotの利用状況を正確に把握したものではないが、強く影響を受けている可能性が高いと指摘されている。
遅かれ早かれ、Stack Overflowで質問や検索をしてコーディングのヒント(または解答そのもの)を得るという手法は、ChatGPTやBing Chatに質問するという手法に切り替わっていくだろう。GitHub Copilotのようなコーディング支援AIが成長することで、質問をするという行動さえ不要になっていく可能性が高い。
しかし、そこには新しい問題もある。ChatGPTのようなAIチャットボットはインターネット上の膨大なリソースを学習ベースとして利用している。したがって、もしStack Overflowのようなサイトが影響力を失い、インターネットに最新の情報を投稿をする人が減れば、AIチャットボットの学習ベースが弱くなることを意味している。AIチャットボットにおいては、知的財産権の問題と並んで、インターネット上の情報の流動性に対する影響についても注目していく必要があるだろう。