Samsung Electronicsが、300億円超を投じて横浜市内に先端半導体デバイスの試作ラインを整備し、日本の素材や製造装置メーカーとの共同研究を進めると5月14日付けで日本経済新聞やNikkei Asiaなどが報じている。2025年中に数百人規模の人材をそろえて稼働を目指すという。
すでに筆者も4月3日付で海外でその旨が報道されていることを取り上げていたが、そこではSamsungが後工程を含む3DICの試作ラインを神奈川県に設置することを検討しているほか、独自情報として横浜市にあるSamsungの研究所内で組織変更で行われ、検討チームが立ち上がっていることなども取り上げた。
日韓の関係改善の兆しが見えた段階で、すでに経済産業省(経産省)は、Samsungの誘致に動いていた模様で、Samsungの日本への試作ライン設置に際して補助金が支給されることは確実とみられる。経産省は、すでにTSMCの3DIC研究開発センターの誘致に補助金を支給した前例があり、Samsungも誘致に成功すれば先端プロセス開発で競い合う2社が日本で次世代3DIC開発を競うことになる。Intelも日本でこの競争に参画するのではないかとのうわさも出ている。
西村経産大臣は5月9日の記者会見で、「日韓双方で投資が行われ、両国にとって互いにメリットがあることが重要である」と述べていたが、日本の素材・部品・装置企業の韓国への投資は、経産省の対韓半導体素材輸出規制下でも(韓国政府やSamsungからの要請もあり)積極的に行われてきた経緯がある。
一部の報道では、Samsungは横浜市鶴見区に家電の研究所を構えており、新たに半導体専門の開発拠点を同市内に設けることになったといわれているが、Samsungの横浜の研究所は、以前から半導体の研究拠点であり、日本人の半導体技術者が、韓国本社の意向に沿った個別テーマの半導体研究や大学などへの資金提供・情報収集などにあたっていた(一貫した試作ラインは持っていなかった)。
TSMC、Samsung、Intelといった世界の最先端プロセスを提供する半導体メーカー3社がそろって日本に先端後工程試作ラインを設置するようなことになれば、将来的には先端量産ファブへの発展も期待できることから、有力な半導体製造装置・材料メーカーを多数抱える日本という地域が半導体の後工程(3DIC)で存在感を発揮できる可能性がでてきたと言える。