富士通は5月12日、武田薬品工業(以下、武田薬品)および国立がん研究センターと、卵巣がん患者のペイシェントジャーニーを電子カルテデータから分析する共同研究を実施し、多岐にわたる治療パターンの可視化に成功したことを発表した。
ペイシェントジャーニーとは、患者が不調などによって疾患を認識してから、診断、治療、さらにその後の生活に至るまでの道のりを図示したものだ。
三者が実施した研究においては、国立がん研究センター東病院の電子カルテシステム上に記録された卵巣がん患者を対象とし、診察から治療の開始、そして治療後までのペイシェントジャーニーに関するデータを患者単位で時系列に分析している。その結果、多岐に渡る患者の治療パターンの可視化に成功したとのことだ。
富士通はこの研究に対し、医療分野における医療データや健康データなどのリアルワールドデータの利活用に向けた「Healthy Living Platform(ヘルシーリビングプラットフォーム)」で提供する予定の、セキュアな分析環境を先行的に活用したという。今後は、同プラットフォーム上で、患者の医療データを抽出し、診療データを次世代標準規格であるHL7 FHIR(Health Level Seven Fast Healthcare Interoperability Resource)への変換にも対応するそうだ。
今回の研究は、卵巣がんの個別化治療の質および治療効果の向上に寄与する臨床の課題抽出を目的としており、2021年5月に三者が締結した共同研究契約に基づいて実施された。国立がん研究センター東病院の電子カルテに記録された2013年5月から2020年10月までの卵巣がん患者574名分の匿名化された治療歴などの時系列情報を含む医療データを、富士通が抽出および標準化し、国立がん研究センター東病院の医師が治療を選択する際の医学的知見を加えてデータセットを作成している。このデータセットを用いて、武田薬品が分析対象データの選定を行い、ペイシェントジャーニーを分析した。
なお、富士通は今回の分析環境の有効性検証を経て、AI(Artificial Intelligence:人工知能)や可視化技術を活用した要因分析などの研究を補助する機能を拡充したセキュアな分析環境を、2023年度上期中にHealthy Living Platformを通じて提供する予定だとしている。