弁護士ドットコムは5月11日、世界初の日本語版のAI法律相談チャットサービス「弁護士ドットコムチャット法律相談(α版)」(12日から利用可能)の試験提供を同12日から開始すると発表した。
チャット法律相談は、マイクロソフトが提供するクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」と、同社が2007年からサービスを展開している無料法律相談サービス「みんなの法律相談」に寄せられた125万件以上の相談データから抽出された質問・回答を用いたAI法律相談チャットサービス。
AzureのAIサービス「Azure OpenAI Service」のGPT-4ベースに、みんなの法律相談と法律ガイド記事の自社データをAPIで連携している。
誰でも24時間、気軽に無料で相談でき、α版では法律相談の中でも上位の相談数を占める男女問題(離婚、浮気、金銭トラブルなど)からスタートする。今後は交通事故、相続、労働問題などのカテゴリを順次追加するとともに、ユースケースを蓄積していく予定だ。
ただ、α版であることから将来的に有料版を提供していくのかという点は気になるところだ。その点について、弁護士ドットコム 弁護士ドットコム本部 本部長の田上嘉一氏は「弁護士法に抵触する恐れがあるので、現状では難しいです」と話す。同氏が指摘する弁護士法第72条は以下となる。
- 弁護士法第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではない。
田上氏は「こうした法律はありますが、将来的にAIが代替する簡単な相談については世界中で議論されていくと想定されます。あくまでAIが生成した文章のため、何が出てくるか100%はコントロールできないため、相談して100%の解決策が提示されるとは思わないですが、未来はこうなるというイメージを社会に提示している感じです。チャット法律相談が議論のきっかけになればと考えています」と説明した。
また、同氏は「現状のChatGPTは正確さを出すというよりも、人が時間をかけて行うものを効率化する側面があるため、法律業務にも使えます。弁護士が行うヒアリングを代替すれば、実際の弁護士がやり取りを把握したうえで相談者との面談を行うなどサポートツールとしての機能も期待できます。人間の作業をサポート・効率化していくツールと位置付けていきます」と続けた。
一方、セキュリティについてはOpenAIには弁護士ドットコム側のデータを渡さない契約とし、セキュリティを担保するとともにデータ自体も長期間保存しない方針としている。
今年2月に同社では、新しいテクノロジーのサービス活用、研究を加速させるため「Professional Tech Lab(プロフェッショナル・テック・ラボ)」の創設を発表しており、チャット法律相談はその一環となる。
同ラボではChatGPTを活用したサービスとして、チャット法律相談に加え、法律専門書籍のリサーチツール、契約相談チャットを開発していく方針としていた。今後、2023年内にはリサーチツールと契約相談チャットのローンチを検討している。
なお、同サービスは入力した情報および弁護士ドットコムの無料法律相談データベースにもとづき、AIを用いて自動的に相談内容に対応した生成文章を提供するサービスではなく、AIによる回答内容の正確性と最新性を保証するものではなく、同サービスは法的な意見を提供するものではないほか、弁護士が提供するサービスを代替するものではないという。