ガートナージャパン(Gartner)は5月11日、テクノロジ人材に関する展望を発表した。いま起こりつつある産業革命的な時代の大転換期に備えるには、テクノロジ人材が活躍できる企業であることが重要だとしている。

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時代の変化にいち早く対応している企業は、テクノロジを駆使できる企業に進化しているという。自社のITに関わる担当者やエンジニアを「クリエーター的エンジニア」として位置付け、People-Centric(人中心)の観点から人を大事にし、人を元気にし、人に活躍してもらうことで、より能動的かつ前向きな組織に変革しつつあるという。

同社のディスティングイッシュトバイス プレジデントアナリストの亦賀忠明氏は「これまでGartnerは、『日本は、江戸時代的な状況から新たな時代 (New World) へと向かいつつある』と述べてきました。こうしたNew World、すなわち産業革命的な時代において、テクノロジ人材、特に『クリエーター的エンジニア』 は不可欠になります」と述べている。

さらに「ChatGPTに代表されるようなスーパーパワー (想像を絶するテクノロジ) と産業革命的なメガトレンドが到来しつつある今、変化への対応は、すべての企業にとって生き残りを懸けた経営戦略となっています。企業は、産業革命を推進するリーダーや、テクノロジの観点から推進できるクリエーター的エンジニアを確保するための人材戦略を加速させる必要があります」と述べている。

また、「企業が産業革命といったかつてない変化に対応するためには、CIO (最高情報責任者) やCDO (最高デジタル責任者) を超えた『チーフ産業革命オフィサー (CIRO)』が必要です。この役割はCIO/CDOが兼務することも可能ですが、そのインパクトは、社内情報システムの最適化、社内のデジタル化やデジタルを活用するといったステージを大きく超えたものです。すなわち、CIROの役割は『今の企業から、デジタルを前提とした企業への再定義』を推進するリーダーということが重要なポイントです。また、その活動期間も、これから2030年、またそれ以降の長期レンジで設定することが重要です」と述べている。

クリエーター的エンジニアを増やそうとする機運が高い企業は、経営者が「自分事」としてこれを積極的に推進し、エンジニアが活躍している企業は、People-Centricなサービスを常に生み出せるクリエーティブな企業に変革。結果的に、顧客満足度や従業員エンゲージメントを改善しビジネスの好循環が生まれ、企業としても強固になるという。

2026年までに日本企業の60%以上が、IT関連部門で働く人々を「クリエーター的エンジニア」として再定義し、「人を大事にし、人を元気にし、人に活躍いただく」ようになると、同社はみている。

また、現在、優秀なエンジニアは貴重な存在となっており、人材を採用しようにも応募してくれない、良い人材が来てくれない、人材が来ても辞めてしまうという企業の声がある一方で、受け入れ側の環境整備に課題がある企業が相当数確認されているという。昨今、Google、Amazonなどの外資系企業でリストラが進行中で、優秀なエンジニアの獲得競争も一部で見られ始めているが、多くの企業では、優秀なエンジニアを集めても昭和の延長のようなカルチャーのままで、そうしたエンジニアが活躍できない状況が続いているという。

亦賀氏は次のように述べている。「企業は2030年に向けて、どのような人材が必要なのかについてプロファイルを定義する必要があります。それと同時に、優秀なエンジニアが真に活躍できる環境を用意することも重要です」

Gartnerは2026年までに、さまざまな業種で産業革命が進行し、日本企業の60%超で優秀なエンジニアの奪い合いが起こるとみている。

亦賀氏は次のように述べている。「クリエーター的エンジニアの離職や奪い合いは、これからさらに深刻なものとなるでしょう。よって、すべての日本企業は、企業や組織のカルチャーを、ゼネラリストの育成を中心とするものから、プロフェッショナルを尊重するものへと転換できるような施策を打つ必要があります。日本では、エンジニアは『決められたことをきちんとこなす作業者』として扱われ、ともすれば下請け的に見なされているケースが多く見られました。しかし、こうした作業者的エンジニアは、今後ChatGPTのようなAIやハイパーオートメーションに取って代わられる可能性があります。これからは、すべてのエンジニアはAIやクラウドといったテクノロジを駆使できるクリエーター的エンジニアになる必要があります。産業革命的な時代において、クリエーター的エンジニアはNew Worldを牽引し、産業革命のリーダーとして今後ますます重要かつ貴重な存在になります」