日本の岸田文雄首相は5月7日、韓国の尹錫悦大統領と韓国ソウルの大統領府で会談し、韓国の半導体メーカーと日本の素材・部品・装置メーカーが強固な半導体サプライチェーン(供給網)を構築できるように連携を強化することで意見が一致したことを共同記者会見で明らかにした。

韓国の中央日報は8日付けで「日本が世界的な半導体供給網で大きな役割を担っているだけに供給網安定は韓国の産業界に肯定的に作用する」との見解を述べている。今後は、次世代半導体の共同開発などでも協業を深めるとの期待が韓国および日本の関係者の間で高まっている。今まで経済産業省(経産省)は、韓国を排除する形で、台湾、米国、ベルギーなどと半導体工場誘致や次世代半導体開発について協議してきたが、ここにきて事態が急展開するかもしれない。

韓国は4月、先行して日本を輸出手続き簡素化が可能な「ホワイトリスト(輸出審査優遇国)」に復帰させた。これに対して、岸田首相は「輸出管理当局間の対話が精力的に行われた結果、日本政府として韓国を『グループA』に追加することに向けて手続きを進めている」と尹大統領に伝え、輸出手続きを簡略化できる優遇措置の対象国として、韓国を復帰させるための手続きを進めていることを韓国側に説明した。

続々と韓国に進出する海外装置・部品・素材メーカー

2019年7月の経産省による対韓半導体素材輸出管理厳格化以降、韓国政府は半導体製造装置・部品・素材の国産化を促進するとともに、日本を含む海外企業の韓国内への誘致を強化してきた。この結果、すでに多数の海外メーカーが韓国へ進出し、中には研究開発部門を韓国に設置したところもある。

例えば韓国政府は積極的に米国企業の誘致を進めており、その結果、Lam Researchは、韓国での半導体プロセスおよび製造装置研究開発および製造体制を強化したほか、Applied Materials(AMAT)も韓国に「半導体製造装置R&Dセンター」の新設を決めた。DuPontも次世代EUV用感光剤とCMPパッド、パッケージングなどの「半導体素材R&Dセンター」と生産施設を韓国内に新増設したほか、Entegrisは半導体用特殊ガス・フィルター・CMPスラリなどの「半導体素材R&Dセンター」の増設を決めた。米国系以外にも、台湾GlobalWafers傘下の米MEMCが韓国での300mmシリコンウェハ製造工場を増設したほか、独BASFやMerckも韓国での薬品製造施設を拡張している。このような状況下で、日本勢も海外勢に負けじと積極的に韓国進出を行ってきている。

ADEKAが韓国で先端半導体メモリ用素材の生産設備増強を決定

ADEKAもそうした日本企業の1社で、連結子会社である韓国法人ADEKA KOREAにおいて、先端半導体メモリ向け高誘電材料「アデカオルセラ」の生産設備増強を決定したことを4月27日付で発表している。すでに半導体プロセス向け高誘電材料として高いシェアを有しているが、今後、数世代の微細プロセスにわたって活用される見通しであることから、同社全州第二工場に21億円を投じ、生産施設の建設が進められており、2023年度中に営業運転を始める予定としている。

またADEKAは、SamsungのDRAM開発・製造拠点である華城に新たな「ADEKA KOREA研究開発センター」を2023年8月に開設する予定ともしている。従来拠点と比べ、延床面積を7倍、クリーンルームを2倍に増やすことで開発を強化、韓国半導体業界からのニーズへの対応強化を図っている。