ガラスメーカー大手であり、電子部材や化学関連素材なども手掛けるAGCは、2014年にクラウドへの移行を決定し、AWSを選定。その後4年間でSAPを含む基幹業務システムのクラウドへのリフトを完了させている。

3月24日に開催された「TECH+セミナー クラウド移行 Day 2023 Mar. DX推進を加速させるクラウド移行」に同社 技術本部 企画部 開発管理グループ ITチームリーダーの大木浩司氏が登壇。「AGCが取り組む『攻めのIT』クラウド移行の効果と展望」と題し、同社が行ったクラウドリフトの内容や効果などについて解説した。

2つのプロジェクトで円滑にクラウドリフト

講演冒頭で大木氏は、AGCが基幹業務をクラウドへ移行することになったきっかけとして、1974年に開設した自社のデータセンターの運用コストが上昇してきたこと、そしてデータセンターを1か所だけで運用することの危険性を感じたことを挙げた。そこで、AWSを社内に円滑に広めるためにインフラサービスをカタログ化する「Alchemy」と、全てがクラウドに移行することを想定しデータセンターの移行とネットワークの強化を目的とした「DAVINCH」という、2つのプロジェクトによってクラウドリフトを推進したと説明した。

  • AGCのクラウドリフトのイメージ図

その大まかな流れはこうだ。2014年にクラウドの検討を開始し、安全性などを評価した上でAWSを選定。まず建築ガラスの基幹業務システムである「EBISU」に適用し、社内最大のシステムで動くことを証明した。ただ、一般のユーザーにAWSをそのまま理解してもらうのは難しいため、AWSのいくつかのサービスをカタログ化して提供するAlchemyを開発した。Excelで利用要望等を申請するだけで、最長5日以内にサーバを提供してもらえる仕組みで、AWSを深く知らないユーザーでも使えるため、すぐに広く利用されるようになったという。

AWSを利用することで自社運営のデータセンターは不要になる。それをスムーズにたたむためのプロジェクトがDAVINCHだ。サーバラックの設置面積あたりのコストで契約できるデータセンターに一旦引っ越し、その後ライフサイクルに合わせてサーバを減らすという方法で、データセンターを完全に撤収した。同時に、クラウドに安全かつ拡張性を持って接続できるネットワークも整備したそうだ。

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