凸版印刷は4月27日、従来のホログラムとは異なる特殊構造を持ち、傾けると文字や絵などの潜像が現れる効果があるホログラム技術「トワイライトグラム」の開発を発表。器具や知識を持たない一般消費者でも目視で潜像の出現を確認でき、容易に真贋判定をすることを可能にする同製品の提供を開始した。
現在、偽造/模倣品などの知的財産侵害物品の流通は増加を続けており、財務省によると、2022年には全世界で4兆6800億ドル(約515兆円)に達したとされている。さらに近年では、インターネット経由での偽造品の流通も増加中だという。偽造品の流通は、正規品の売上を毀損するだけでなく、その売上が反社会的勢力の資金源になるという点で、一個人や一企業だけに留まらない大きな社会問題となっている。
偽造品を排除するための真贋判定用の技術として長年にわたり活用されてきたのが、微細構造と鮮やかな輝き(光学効果)によるホログラムで、日本の紙幣にも採用されていることがよく知られている。ホログラムは、光の回折という物理現象が利用されたもので、真上から入った光が、ホログラムの表面に設けられた微細構造により回折光となり、人間の目に届くことで、ホログラム独特の鮮やかな輝きが生まれるのである。
従来は偽造が難しかったホログラムだが、近年では技術水準が向上したため、単純な構造のホログラムは偽造可能になりつつあるという。そのため、偽造困難を困難にする、より複雑な構造のホログラムが求められている状況だ。そこで凸版印刷は今回、一般的なホログラムとは異なる特殊構造を持つトワイライトグラムを新たに開発したという。
トワイライトグラムの主な特徴は以下の3点だ。
- 従来のホログラムが持つ「色の角度対称性」を崩す特殊構造
- 一般消費者でも視覚的に真贋判定が可能
- ほかのホログラムや真贋判定サービスとの組み合わせが可能
まず1点目の特殊構造については、従来の一般的なホログラムの場合、見る角度が同じであれば、左右でどちらも同じ色に見えるという、いわば「色の角度対称性」と呼べる性質を有している。しかしトワイライトグラムの場合はそれがな特殊な構造から生まれる回折光は、見る角度が同じであっても左右の方向が異なれば、異なる色が見えるという。つまり、色の角度対称性が崩れているのである。
続いて2点目について、トワイライトグラムの場合、ホログラムを傾けると文字や絵などの潜像が出現する仕組みを利用して、潜像が出現しない場合は偽物であると明確に判断をすることができ、一般消費者でも容易に真贋判定が可能になるという。
3点目については、トワイライトグラムは従来のホログラム技術と組み合わせて使用することも可能というものである。その結果、より高い意匠性と複数の確認方法を併用することができるとしている。
なお凸版印刷によると、トワイライトグラムの価格は、100万枚製造時で1枚あたり5円~となっている(サイズやデザイン、他技術との組み合わせなどによって価格は変動するとのこと)。
凸版印刷は、トワイライトグラムを同社の既存ホログラム技術・模倣品対策サービスと組み合わせることで、より偽造を困難にし、偽造品の流通を防ぎたい医薬品/化粧品/高級ブランド品/機械・部品/ライセンスグッズ/金券などの用途に向けて提供していくという。
さらに、今回のトワイライトグラムなどのホログラムをはじめとした、さまざまなセキュアソリューションをグローバル市場に展開し、2030年までに関連受注を含めて10億円の売上を目指すとする。また模倣品対策技術の提供によって、安全・安心な社会の実現に貢献していくとしている。