ElevationSpaceと宇宙航空研究開発機構(JAXA)の両者は4月27日、従来にない発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みのもと、2023年4月より「地球低軌道拠点からの高頻度再突入・回収事業」に関する共創活動を開始したことを共同で発表した。
近年、民間のロケット打ち上げ事業者の躍進により、地球から宇宙への「行きの便」(物資輸送)は増加中だ。一方、宇宙から地球への「帰りの便」(物資回収)は、機会やその頻度が限られており、タイミングの自由度も高くないのが現状だ。
国際宇宙ステーション(ISS)での微小重力環境下での実験などについては、「宇宙で実験して地上で解析」というサイクルを短期間で高頻度に実施したいという要望や、実験後速やかに成果物を地上に回収したいという声があがっているとする。将来、微小重力環境の利用がさらに盛んになれば、より高頻度で使い勝手の良い「帰りの便」の需要が高まることが予想されているという。
そこでElevationSpaceとJAXAは、今回の共創活動により、宇宙から地球への新たな帰りの便の構想を具体化することで、微小重力環境の価値を最大限利用できるインフラの構築を目指すとしている。これらは宇宙領域への参入企業増加と、それに伴う国内サプライヤの競争力向上をもたらし、さらなるイノベーションの創出に貢献するとした。
ElevationSpaceは現在、打ち上げた人工衛星内で実証・実験などを行った後、大気圏に再突入させて回収するという小型宇宙利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の開発を行っており、2025年に技術実証機を打ち上げる予定だ。今回の共創では、その設計・開発・運用ノウハウを活用し、地球低軌道拠点からの高頻度再突入・回収システムおよびユーザーニーズを踏まえた事業計画や回収技術の実証計画などの検討を行うという。
「ELS-R」で実現を目指す打ち上げから回収までの一連のサービスに加え、今回の共創で宇宙から地球への新たな帰りの便を具体化することは、宇宙環境利用ニーズに多様な方法で対応することを可能とし、宇宙環境利用の高頻度化・低コスト化に寄与するとしている。
また同社は併せて、日本モジュール事業構想を掲げる三井物産および三井物産エアロスペース(以下「三井物産グループ」)と連携し、日本が提供するサービスとして同事業の実装を目指すとする。
一方のJAXAは、2018年に「こうのとり」7号機でHTV搭載小型回収カプセル「HSRC」にてISSからの物資回収技術の実証に成功し、その後のJAXA内の研究活動として、「大気突入・降下・着陸および回収(EDL&R)技術研究」にて、小型・高頻度回収システムの要素技術研究に取り組んでいる。今回の共創では、これらの活動で培った知見を活かした開発支援を行うと同時に、要素技術の軌道上実証計画の検討などを行うとしており、これらの取り組みは、今回の事業の実現・高度化に寄与するのみならず、JAXAにとって将来必要になると想定される再突入機の大型化・有人化などにつながるものとしている。