NECは4月28日、2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の通期決算説明会をオンラインで開催した。2022年度の売上収益は、前年度比9.9%増の3兆3130億円だった。営業利益は1704億円の黒字(同比379億円増)、調整後営業利益は2055億円の黒字(同比345億円増)となった。
2022年度は全セグメントでの増収や「ネットワークサービス」を除く全セグメントでの増益により、当初の年間業績予想を上回る決算となった。
調整後当期利益は1386億円(同比287億円減)と年間予想を下回ったが、法人所得税などの税金費用計上の影響を除いた実質ベースでは増益となる。
なお、第4四半期単体での業績は、売上収益が1兆438億円の増収(同比13.7%増)、調整後営業利益が1221億円の増益(同比270億円増)だった。
エンタープライズとグローバルの受注が好調
調整後営業利益の増減要因としては費用構造最適化など55億円の費用計上が挙げられた。一方、部材不足解消などのマクロ環境要因や事業オペレーションはプラス要因となった。
通信事業者の投資抑制や、グローバル5G事業における損失発生などにより不調だったネットワークサービスセグメントは、前年度比6.2%増の5434億円の増収で着地した。
同セグメントは、第4四半期に売上が拡大したことでオペレーションが改善。資産クリーンアップや知財収入などを計上して第4四半期単体での調整後営業利益は247億円。年間の調整後営業利益は241億円の黒字となった。
今回の決算発表では、仕入れや材料調達に現金を支払ってから回収するまでの期間を示すCCC(Cash Conversion Cycle)の状況についても触れられた。2022年度は支出が先行する大型プロジェクトの増加により、通常のオペレーションベースと比べてCCCが6日増加したという。
NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏は、「今後も長期・大型プロジェクトが増加していくため、引き続き、前金の獲得など改善施策を推進していく」と説明した。
セグメントごとの受注動向は、年間通じて全セグメントでプラスとなった。特に「エンタープライズ」は、ITサービスの需要増を背景に前年比12%の増加となった。「グローバル(変動の激しい海洋事業を除く)」は、Netcrackerによる大型案件が全体を牽引して15%の増加となった。
アビームやNECセキュリティと「コアDX」事業に注力
説明会では、2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の年間業績予想も発表された。売上収益は3兆3800億円、調整後営業利益は2200億円を計画し、NECはすべてのセグメントでの増益を予想している。
2025中期経営計画の進捗について、森田氏は「セグメント別に見るとネットワークサービスが想定より遅れているが、他のセグメントは順調に推移している。セグメントごとに個別の課題はあるが、全体では着実に計画を前進できている」と評価した。
NECが成長事業と位置付けるDG/DF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)領域では、2022年度に実施した開発投資の成果の刈り取りや、APAC(アジア太平洋)およびEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)での売上拡大、オフショア開発推進など他社とのシナジー拡大により収益性改善に取り組むという。
グローバル5G領域では、RU(Radio Unit)のようなハードウェアからソフトウェア・サービスへのシフトで収益性を改善するほか、引き続き国内市場でのシェア拡大と海外市場での販路拡大を図る。
コアDX(デジタルトランスフォーメーション)では、DXオファリングの基盤となる「NEC Digital Platform」によるサービス提供を拡大しつつ、アビームコンサルティングと連携したコンサル起点での大型案件獲得を目指す。
森田氏は、「コアDXの対象となる市場はITサービス全体となる。現状、1兆3000億円と見込む同市場の中で、当社のDX基盤を通じてどれだけサービスを提供していけるかが問われる。デジタルIDやモダナイゼーション、NECセキュリティによるマネージドサービスなどを拡大することによって、従来は個別SIで対応していた市場を取り込んでいくが、十分に対応可能だと考える」と意気込んだ。