ニュータニックス・ジャパンは4月26日、VMwareから米Nutanixの社長兼最高経営責任者(CEO)に就任したラジブ・ラマスワミ氏の来日記者説明会を都内で開催した。説明会では日本市場向けの新ソリューションなどが紹介された。
制約がある中でのビジネス展開に伴うITの課題
はじめに、ラマスワミ氏は「現在、グローバルにおいて企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでおり、より良いカスタマーエクスペリエンスを提供しようと試みている。また、継続的な成長を望むと同時にイノベーションにより新しいビジネスを構築したいと考えており、リスク管理も必要となっている。一方で、予算や人材、時間をはじめとした制約事項も存在しており、そのよう中で新たな取り組みを推進し続けなければならない」と指摘する。
同社が2022年12月~2023年1月にかけてNutanixユーザーの意思決定者を対象グローバルで実施したクラウド利活用に関する調査「Enterprise Cloud Index」によると、企業の99%が過去1年間で1つ以上のアプリを別のインフラに移行したことがあると回答しているほか、85%がクラウドコストを管理することが重要だと考えている。
また、86%の企業はアプリ移行は複雑かつコストを要すると答え、94%はクラウド上のアプリやデータを一元的に管理することが重要との認識であり、85%は企業の持続可能性目標を達成することが課題だと認識しているという。
単一で統合された環境を提供する「Nutanix Cloud Platform」
調査結果を受けて、ラマスワミ氏は「問題は多くのアプリと膨大なデータの存在だ。データセンターやエッジ、パブリッククラウド上などで起きていることではあるが、大半の企業がサイロ化した個別の環境で管理しようとしている。しかし、サイロ型のモデルは遅く、複雑であり、コストも高く、人材のスキル不足が懸念される。そのため、必要なものは一貫したクラウド運用モデルとなる。単一かつ統合された環境を提供し、企業はアプリやデータを一元管理することでシンプルでアジャイルになり、われわれがフォーカスしている領域だ」と強調した。
そのため、同社では、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)のテクノロジーを基盤に、クラウドインフラストラクチャ、クラウドマネージャー、ユニファイドストレージサービス、データベースサービス、デスクトップサービスで構成した「Nutanix Cloud Platform」を提供している。
ラマスワミ氏は「Nutanix Cloud Platformは大半のワークロードを走らせることができる。つまり、すべてのアプリだ。I/O性能の向上とレイテンシの低減を実現し、データベースワークロードを中心とした最適化を図り、全体的なパフォーマンスの向上が見込める。Nutanixのユーザーのうち、データベースやデータウェアハウスのワークロードに当社の製品を使用する割合は70%にのぼる」と話す。
また、同氏はハイブリッド/マルチクラウドで課題となる環境を横断した管理が可能だといい、クラウド移行や運用簡素化、クラウドのコスト管理、さまざまな環境に対応するためのスキルを提供するという。
エンタープライズアプリやクラウドネイティブアプリ、分析/機械学習、データベース、デスクトップなど、あらゆるワークロード、そしてデータセンター、パブリッククラウド、サービスプロバイダークラウド、エッジといったさまざまな場所でアプリを稼働し、データを管理することができるというわけだ。
日本市場向けの新ソリューション、新プロジェクト
ラマスワミ氏のプレゼンテーションを受けて、続いて登壇したニュータニックス・ジャパン コーポレートバイスプレジデント 兼 代表執行役員社長の金古毅氏が日本市場向けの新ソリューションと、新プロジェクトについて説明した。
まず、金古氏はEnterprise Cloud Indexの調査結果を引き合いに出し、日本におけるクラウドの利活用について「2018年はプライベートクラウドとパブリッククラウドのいずれかのみを利用するという回答者が過半数だったが、複数の異なるIT環境でワークロードで実行することが必然と考える企業が増加している。ハイブリッド/マルチクラウドが主流となり、ホスティングのデータセンター利用は3倍に拡大した」と述べた。
調査によると、56%の日本企業がプライベートクラウドとパブリッククラウドの混在、複数のパブリッククラウド、オンプレミスとホストティングデータセンターの組み合わせなど、複数のIT環境を混在利用していると回答し、85%の日本企業はクラウドコストコントロールをITインフラにおける課題と認識。
さらに、91%の日本企業はさまざまなワークロードとデータを管理する単一のプラットフォームが理想的と答え、ITインフラ投資決定時の考慮事項としてはデータ主権(16%)と規制遵守(16%)を最も多く挙げている。
「Nutanix ハイブリッド・マルチクラウドスターターキット」
こうした調査結果により、同社ではプラットフォーム移行を支援する「Nutanix ハイブリッド・マルチクラウドスターターキット」を発表。
同サービスはNutanix Cloud Platformと、導入・移行サービスを組み合わせたものとなり、「Nutanix Cloud Infrastructure Pro」と「Nutanix Cloud Manager Starter」をバンドルし、プラットフォームの移行方式の検討と移行計画立案のためのワークショップV2V(Virtual to Virtual)の移行を支援する。これにより、インフラストラクチャのAIOpsや監視、プランニング、ライトサイジング、ローコードの自動化により、データサービスの管理機能などを提供する。
また、ハイパーバイザー「Nutanix AHV」を活用したプライベートクラウドへの移行、またはNutanix Cloud Clusters(NC2)を活用したパブリッククラウド環境への移行など、V2V移行方式の実証・リハーサル、本番の移行作業を実施。
「Nutanix データベースサービスエコシステムプロジェクト」
一方、データベース運用の自動化を推進する「Nutanix データベースサービスエコシステムプロジェクト」を発表した。これは、同社のパートナーがデータベース管理ソリューション「Nutanix Database Service」(NDB)関連サービスを迅速に顧客に提供できるよう支援するというものだ。
プロジェクトは「NDBワークショップ」「NDB早期導入支援コンサルティングサービス」「NDB技術認定資格取得支援」の3つで構成している。ワークショップは、NDBで対応可能なデータベース関連の課題や顧客の機械特定に必要なスキルを育成するパートナー向けのワークショップを開催する。
早期導入支援コンサルティングサービスは、NDBの導入企業の価値を最大化するコンサルティングサービスを提供し、データベース活用・管理の課題解決に焦点を当て、NDBを活用したデータベース展開、運用の自動化を支援するという。
技術認定資格取得支援は、Nutanix Cloud Platformを活用したデータベース運用管理者、開発者向けにパートナーがNDBの技術を理解するうえで必要なトレーニングを提供。トレーニングの受講にはNDBに関する基礎知識を取得する勉強会やNutanix認定プロフェッショナルデータベース自動化の資格取得に向けたワークショップの機会を提供する。
山一ハガネの導入事例
説明会の終盤にはNutanix Cloud PlatformとNDBを採用した山一ハガネの導入事例が紹介された。同社は、金型の材料になる工具鋼と、部品に加工される生産材の2種類で構成した自動車産業向け特殊鋼の卸売を核としている。
工具鋼などをストックして部品製造から配送までを一気通貫で行う「ファクトリーモール」を構築し、鋼材のロケーションを確実に把握できる独自の在庫管理システムで生産材へのニーズにスピーディーに対応している。
従来は、大半の基幹系システムをデータセンターでホスティングし、ROI(費用対効果)の向上を期待して各種システムを導入したものの、ベンダーロックインの状態になり、バックアップすら取れないオペレーションになっていたという。
このようなことから、全システムの運用管理を内製化するため、Nutanix Cloud Platformの採用を決定。売上/請求、入出荷、在庫管理などを行う基幹システムをNutanix上に構築し、売上高や利益率など経営分析データをPostgreSQLとNDBを使って運用している。
山一ハガネ 代表取締役の寺西基治氏は「I世の中の変化が激しい中で社内システムを変えていくことを外部ベンダーに委託すると時間・コスト的にも弊害になっていた。しかし、内製化したことでT担当者の時間の効率化が図れ、レスポンスも早いと好評だ。他社に先駆けた管理手法や事業展開が可能になると確信しており、事業の将来性としてNutanixに期待している」と効果を述べていた。
そのほか、意思決定の迅速化や紙の削減などを目指して電子ワークフローシステムも導入し、Nutanixで運用を開始している。こうした内製化により、プロセスが合理化され、運用コストの軽減や作業時間の短縮、ベンダーに依存せず社内判断で即座に変更などに対応可能なほか、稼働チェック、異常値検知やNDBのチェックが容易になり、運用管理が効率化しているという。