サイバーエージェントは4月26日、2023年9月期第2四半期(1~3月)の決算を発表した。売上高は前年同期比2.4%増の1956億円。四半期で過去最高の売上高を更新した。連結最終利益は79億円と、前四半期(22年10~12月)の50億円の赤字から黒字に転じた。

一過性の要因であったインターネットTV「ABEMA」の「FIFAワールドカップ(W杯)」関連費用による損失が改善し、ゲーム事業では主力タイトルの周年記念が功を奏した。連結営業利益は27.0%減の187億円だったが、メディア事業の損失改善とゲーム事業の増益に伴い、前四半期の12億円の赤字から199億円増益した。

  • サイバーエージェント2023年9月期第2四半期(1~3月)決算概要

    サイバーエージェント2023年9月期第2四半期(1~3月)決算概要

26日に開催された決算発表会に登壇した代表取締役社長の藤田晋氏は、「第1四半期はW杯の費用負担が業績を圧迫したが、第2四半期では無事に好調な状況に戻った」と説明した。

  • サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田晋氏

    サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田晋氏

ABEMAを中心とするメディア事業の売上高は前年同期比22.4%増の334億円だった。営業損益は5億円の赤字だったが、前四半期は93億円の赤字だったことを踏まえると、改善しているようだ。W杯の関連費用の影響も残るが、競輪・オートレースの車券販売サービス「WINTICKET」などの周辺事業が増収を牽引した。

  • メディア事業の売上高・営業損益

    メディア事業の売上高・営業損益

WINTICKETはサービスを開始してから3年目だが、2023年9月期第2四半期の取扱高は約2219億円(前年同期比1.4倍)で、インターネット投票におけるシェア率は40%に到達した。「WINTICKETの業績は、サイバーエージェントが持っているウォッチ&ベットの強みを証明している」(藤田氏)

W杯放映後のユーザーの歩留まりも良く、1週間あたりの利用者数(WAU)は3月時点で1980万人と、前年同期比で1.5倍。またABEMAは2022年、デジタルメディア協会が主催するAMDアワード大賞など、多数の賞を受賞した。

藤田氏は、「W杯を放映してからユーザーからの好感度が非常に上がった。それだけでなく、広告主からの出稿率が上がり、出演者からの出演依頼が増え、好循環な影響を及ぼしている。大きな投資だったが、完全に成功したと言える」と、胸を張った。

  • ABEMAは2022年、多数の賞を受賞した

    ABEMAは2022年、多数の賞を受賞した

ゲーム事業は売上高が10.0%減の621億円、営業利益が29.0%減の152億円だったが、前四半期比でみてみると、それぞれ51.9%増、191.7%増と大幅に増益していることが分かる。同四半期期間で主力6タイトルの周年記念を開催し、特にスマートフォン向けゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」や、「グランブルーファンタジー」のイベントが盛況だったという。

今後も、2023年内に有力IP2タイトル「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」、「呪術廻戦 ファントムパレード」を提供する予定。「十分に期待できる水準まで仕上がっている」(藤田氏)とのことだ。

  • サイバーエージェントは現在、新たに2つの有力スマートフォン向けゲームを開発中

    サイバーエージェントは現在、新たに2つの有力スマートフォン向けゲームを開発中

そして、稼ぎ頭のインターネット広告事業は、新規開拓が貢献し、売上高が6.7%増の1002億円で、四半期で過去最高の売上高を更新した。一方で、営業利益は、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)事業への先行投資を継続しているため、33.9%減の49億3000万円だった。

「ChatGPTをはじめとした新しいテクノロジーにいち早く着手し、新規事業を模索している。負担は少なくないが、持続的な成長に必要なことだ」と、藤田氏は語った。

  • 最先端技術や環境変化に合わせた先行投資

    最先端技術や環境変化に合わせた先行投資

2023年度9月期の業績見通しについては、売上高が前年比1.3%増の7200億円、営業利益が400~500億円と、前回予想から据え置いた。ゲーム事業におけるボラティリティなどを考慮したレンジにて利益を予想しているとのこと。

「広告事業とゲーム事業で利益を積み上げ、メディア事業に十分な投資をする。しっかりとマネタイズしながらABEMAを成立させていきたい」(藤田氏)