Dr.Foodsが開発した植物性キャビアとは

Dr.Foodsは、海藻の抽出成分などからなる植物性キャビアの開発に成功したことを発表。4月25日には、約1年をかけて開発したという同製品の記者発表会と先行試食会を行った。

Dr.Foodsは「Save the Earth with the power of science」をスローガンに掲げ、培養肉や微細海藻、遺伝子組み換え大豆といった、培養技術を活用した代替肉などの食品に関する研究開発を進める企業。同社は昨年、植物性の培養フォアグラを開発し話題を集めた。

植物性キャビア開発までの背景とこだわり

今回開発された植物性キャビアの開発拠点は、岩手県。この地には、Dr.Foodsが開発した食品の製造を行うマーマフーズの工場があり、植物性キャビアの開発にあたって、Dr.Foodsの商品開発を担当する井戸健二氏自身が現地に移住して開発を進めた。近年、魚の漁獲量が減少している岩手で、海藻をもとにした「新たな特産品を作りたい」という思い、キャビアの生産に不可欠なチョウザメが絶滅の危機に瀕していることに対する課題解決、および環境保全という観点が、キャビア開発のきっかけになったという。

  • 「麻布十番 秦野よしき」の秦野芳樹氏、Dr.Foodsの代表取締役を務める石塚孝一氏、Dr.Foods商品開発の井戸健二氏

    「麻布十番 秦野よしき」の秦野芳樹氏、Dr.Foodsの代表取締役を務める石塚孝一氏、Dr.Foods商品開発の井戸健二氏 (左から順)

植物性キャビアにおけるこだわりは、主に「味、・香り・色味」の3点だという。味については、実際のキャビアと同程度の油脂成分を配合することで、濃厚でリッチな味わいを実現。また、植物性である利点を活かし、魚卵類特有の嫌な匂いをさっぱりとさせ、濃厚ながらクセのない風味を実現したという。さらに、製法と素材を工夫することで、深みのある灰色を再現したとのこと。キャビアの中で最高級とされるベルーガ・キャビアに近づけ、他の植物性キャビアとは一線を画す仕上がりになっているとする。

麻布十番の寿司店から世界へ

今回発表された植物性キャビアの価格は、50gあたり4400円の予定で、主に飲食店向けに販売されるという(発売日は未定)。また、「麻布十番 秦野よしき」の分店である「立喰 鮨となり」にて2023年4月26日から5月16日までの期間限定で、植物性キャビアを乗せた「茄子のヴィーガンキャビア乗せ」が提供される。さらに、ロンドンのメイフェア地区にあるフードコート施設「Mercato Mayfair(メルカートメイフェア)」での提供も決まっており、今後さらなる世界進出を目指していくとした。

  • 瓶に詰められた植物性キャビア

    瓶に詰められた植物性キャビア

植物性キャビアを載せた寿司を実食

ここからは、実際に試食に参加した筆者の食レポを記していく。

今回の試食会で提供されたのは、キャビアを載せた寿司三貫だ。

  • キャビア寿司三貫

    試食会ではキャビアを使った寿司三貫が提供された (出所:Dr.Foods)

まずは、ウニとキャビアの握りを実食。ウニの濃厚さをさらに際立たせるキャビアの旨味が口いっぱいに広がる。ひと噛みすると、キャビアのしっかりとした塩味と食感を感じた。植物性とは思えないクオリティである。

  • ウニとキャビアの握り

    ウニとキャビアの握り

次に、「立喰 鮨となり」でも提供される茄子の揚げびたしを使った一貫を実食。茄子自体も熊本県産の指定農家から取り寄せ、米油で揚げているというこだわりの逸品。そこに植物性キャビアが加わることで、茄子の甘みとキャビアの濃厚さが絡まる贅沢な味わいを体感できた。

  • 茄子のヴィーガンキャビア乗せ

    茄子のヴィーガンキャビア乗せ (出所:Dr.Foods)

最後は、まぐろのたたきといかとキャビアの握りを実食。まぐろのまろやかさ、いかのコリコリとした食感に加えて、キャビアのプチプチ感が加わり、楽しい食感が印象的。味ももちろん美味しく、「本物とはやっぱり違う」と感じることの多い代用食品の概念が変わった。

  • まぐろのたたきといかとキャビアの握り

    まぐろのたたきといかとキャビアの握り

魚臭さが苦手な方にとっては、魚独特の匂いを抑えた植物性キャビアは親しみやすい。だが「麻布十番 秦野よしき」の秦野氏が語るように、魚特有の風味が強い本物のキャビアを求めている層には、よりリアルな香りを再現したキャビアを提供するなど、その味わいにバリエーションをもたせるのも面白そうだと感じた。

今後も新たな代替食品の開発を目指す

Dr.Foodsの代表取締役を務める石塚孝一氏は、この植物性キャビアを日本にとどまらず世界へ展開していきたいとしている。また、同社の井戸氏はフォアグラ、キャビアに引き続きこれからもさまざまな食材の代替品に取り組む意向を示す。同社は今後も代替食品の開発などを通して、地球に優しい社会の実現に貢献していきたいと意気込みを見せている。