世界最大規模の研究開発機関の1つに数えられるSRI Internationalは4月24日(米国時間)、XeroxからPalo Alto Research Center (PARC:パロアルト研究所)の譲渡を受けると発表した。「シリコンバレーを象徴する2つの組織が結集し、SRIは多様な技術・科学分野における能力をさらに構築、拡大、拡張できるようになる」としている。

PARCは、1970年にコンピュータサイエンスの新技術開発を目的にXeroxによって設立された。スタンフォード大学の近くに本拠を置き、レーザープリンター、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)、イーサネット、Smalltalkなど、1970年代から80年代前半にかけてその後のインターネットやパーソナルコンピュータの普及につながる様々な研究成果を生み出してきた。1979年にスティーブ・ジョブズ氏がPARCを見学し、その時に見たデモがMacintoshの誕生に大きく影響したと言われている。PARCも「Alto」というコンピュータを開発したが、Xeroxがパーソナルコンピュータに消極的だったため商業的な成功を果たせなかった。

2002年に法人化され、Xeroxの完全子会社になった。現在は、AIとヒューマン-マシン・コラボレーション、IoTとAI、デジタルワークプレイス、ノーベルプリンティング、デジタル・デザイン/製造、マイクロシステムとスマートデバイスといった分野にフォーカスした研究を進めている。

PARCの譲渡についてXeroxは「PARCの深い技術革新力がSRIによって維持され、Xeroxは事業の簡素化と最適化を図り、ハイブリッドワークの継続的な進化にソリューションを集中させられる」と説明している。2011〜13年頃は200億ドルを超えていたXeroxの年間売上高が約70億ドル(2021年)まで減少しており、2019年に財務の柔軟性を高めるために持ち株会社に移行していた。

SRIは、1946年にスタンフォード大学が学内にStanford Research Institute(スタンフォード研究所)として設立。1970年に大学から分離独立した研究機関で、約1500人の研究員を抱える。一般的にはコンピュータ用のマウスや米Appleの音声アシスタント「Siri」の基盤となる技術の開発などで知られるが、米国防高等研究計画局(DARPA)や米航空宇宙局(NASA)などの政府機関から研究を請け負うほか、民間企業との共同研究にも取り組んでいる。

SRIにPARCが加わることで、コンピュテーショナルデザイン、コンピュータビジョン、AIとヒューマン-マシン・コラボレーションなど多くの分野でSRIは研究能力を強化でき、持続可能性や精密医療など、戦略的成長分野で専門知識を加えられる。PARCも多くの政府契約業務をこなしており、PARCとSRIは競合する部分もあるが、PARCは歴史的にSRIよりも商業志向が強い。SRIとPARCが互いの強みを活かし、より広範な研究開発と技術革新を推進できると期待されている。