富士通は4月25日、5G(第5世代移動通信システム)の仮想化基地局の演算リソースをソフトウェア上で制御することで、5Gの機能をさらに強化したポスト5Gに対応可能な仮想化基地局の高度化技術を開発したことを報告した。

NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(委託)」における成果であり、同技術の開発によって、現在普及している5Gから将来のポスト5Gへのシームレスな通信インフラの移行が期待できるという。

ポスト5Gにおいては、超高速、超低遅延、多数同時接続といった複数の基地局機能を同一の仮想化基地局内で処理することが求められ、ハードウェアリソースを各機能に柔軟に割り当てる必要がある。

しかし、従来の仮想化基地局では各処理タスクやメモリ負荷、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)使用率がOS(Operating System)に依存していたため、複数の基地局機能をリアルタイムに処理するのが困難だ。また、あらかじめ必要となるハードウェアリソースを考慮してシステムを構築する従来のハードウェア基地局では、同時に処理が必要な特性の異なるサービスごとに本来必要のない余剰なリソースを確保していたという。

そこで同社は今回、5G基地局の仮想化基盤上で演算リソースをスケジューリングするパーティショニング処理技術を開発し、複数の基地局機能のリアルタイム処理が可能であることを示した。

また、基地局が処理するユーザー数やトラフィック量に応じて動作に必要なCPUやメモリのリソースを動的に獲得するハードウェアリソース動的配置技術も開発し、最大データ転送量やレイテンシなどのサービス要求条件や運用中の接続端末数、サービス種別を考慮したハードウェアリソースの割り当て制御を実現している。

  • 開発した技術のイメージ

    開発した技術のイメージ

今回開発した技術を同社がが提供する仮想化基地局に適用することで、従来型のハードウェア基地局と比較して、スループット性能が約30%向上し同時接続端末数が3倍に増加。ネットワーク全体における基地局設置数の削減にもつながり、初期投資から運用までの費用(CAPEX、OPEX)も、ハードウェア基地局と比較して30%以上削減できることを確認したとのことだ。

汎用サーバのCPUやメモリなどのハードウェアリソースを基地局処理へ動的に割り当て可能にしたことで、プライベート5G向けの小規模システムから、通信事業者が提供するパブリック5G向けの大規模ネットワークまでシステムを構成できる仮想化基地局が実現できたようだ。

  • 仮想化基地局の例

    仮想化基地局の例