DICは4月24日、グローバルに展開している主力事業のサプライチェーン全体を最適化するためとして、先進のデジタル・テクノロジーを使用した「デジタルSCM(サプライチェーン・マネジメント)プラットフォーム」の運用を開始したと発表した。まずはカラー・マテリアルやパフォーマンス・マテリアルの一部の地域・事業から運用を開始し、2025年までにグローバル展開する予定だ。

  • デジタルSCMプラットフォームの概念

同社はこれまで、世界中の顧客から集めた需要情報や各国工場の生産計画、拠点毎の製品・原材料の在庫管理、調達計画など、サプライチェーン上の多様な計画業務を地域・事業単位で個別に行ってきた。

また、各拠点で頻繁に起こる納期調整や数量変更、在庫管理や変更手続など社内外の関係者との煩雑な調整業務は、Excelなどによる手集計やメールなどによる属人的な伝達手段で行っており、スピード感をもった正確かつ効率的な実行が困難だったとしている。

これらの課題を解決するため、同社は80人を超える社内外の関係者が参画する「SCM構築プロジェクト」の下で、「全体最適」をスローガンとしたグローバルSCMの標準モデル構築に取り組み、新プラットフォームの立ち上げを実現した。

同プラットフォームを支えるサプライチェーン・デジタル・ツールには、カナダKinaxis(キナクシス)の「RapidResponse」を採用。

同プラットフォームの特徴として同社は、グローバルで統一した標準業務プロセスの確立、グローバルで標準化したSCM業務パフォーマンス指標(KPI、重要業績評価指標)の導入、グローバルで標準化したSCMプランニング・ツールの導入の3点を挙げる。

標準業務プロセスについて、従来は国や地域、拠点ごとに異なった業務プロセスを属人的に回す「個別最適」をしていたが、グローバルで業務を標準化し、デジタルを活用した仕組みで属人性を排除する「全体最適」の標準業務プロセスを新たに確立したという。 これにより、グローバルで需給を一元管理する体制が整い、業務変革や効率化、顧客サービス率向上が期待できるとのこと。

KPIに関しては、キャッシュフロー改善、顧客サービス率向上、業務の効率化を切り口としたグローバルで標準化したSCM KPIを設定し、アップデートしたKPI情報をグローバルに統一し可視化・共有する仕組みを導入した。

これにより、在庫適正化、納期遵守率の向上、欠品などに伴う各種調整業務の削減効果が期待できるとしている。

SCMプランニング・ツールとしては、サプライチェーン上のモノの流れを管理するというSaaS型デジタル・ツールであるRapidResponseを、グローバルで標準化したSCMプランニング・ツールとして導入し、各拠点で別々に作成している販売計画、在庫計画、生産キャパ管理などのSCMに必要な情報を1つのデジタル・プラットフォームに統合し、全体の可視化を図った。

これによって、データ収集・計算・チェックに関わる業務効率化や統計的需要予測の活用により計画精度の向上が期待できるとのこと。

同社は、不確実性が高い事業環境の下でのサプライチェーンにおいて、自社グループ内に加え、原料サプライヤー、製造委託先、ディストリビューター(物流業者)、顧客など社外のステーク・ホルダーとも多様なシステム連携を進めることを視野に入れているという。

また、サプライチェーン情報のデジタル化は、サプライヤーを含めたサプライチェーン全体でのカーボン・ニュートラルの実現に向けた温室効果ガス(GHG)排出量の計算・可視化など、新たな取り組みにも有効な手段となり得るとしている。

将来、サプライチェーン領域においても、IoT、AI(人工知能)やブロックチェーン(分散台帳)などの技術実装が進むと同社は考えており、今後も先進のデジタル技術を積極的に取り込み、グローバル・サプライチェーンの一層の強化を図っていく計画だ。