中央大学は4月19日、光を用いた非侵襲の脳機能イメージング法「機能的近赤外分光分析法」(fNIRS)を利用して、「コト消費」(体験消費)における価値判断時の脳機能を可視化し、効果を定量化することに成功したと発表した。
同成果は、中央大 理工学部 人間総合理工学科/研究開発機構の大石拓樹大学院生、檀一平太教授らの研究チームによるもの。詳細は、「Frontiers in Neuroergonomics」に掲載された。
近年、体験などを対象としたコト消費と呼ばれる消費形態が注目を集めている。そうした中、組み立て型の製品を消費者自身が完成させることで、「支払い最大価格」(WTP)が高く評価される認知バイアス「IKEA効果」が生じることが知られている。なおWTPとは、ある商品を購入する際に支払っても良いと感じる最大価格のことをいう。
IKEA効果発生時には、製品に対して愛着が生じた結果、WTPが上昇すると考えられている。しかし、同効果が発生する際に脳活動にどのような変化が起こっているのか、その認知メカニズムは謎のままだった。そこで研究チームは今回、同効果が発生することを確認した上で、同効果によって生じる認知メカニズムを脳機能の観点から検討したという。
今回は先行研究に基づき、DIY条件のWTPはNon-DIY条件の場合よりも高いという仮説が立てられた。脳機能については、消費者が製品を組み立てるDIYによって発達すると考えられる愛着や記憶の検索が行われることが反映され、WTPの評価に関連して前頭前野の前頭極、両側背外側前頭前野、両側腹外側前頭前野のいずれかの活動が高まると予想された。
実験には30名の学生が参加し、製品の組み立てを行った後に、6つの製品について製品のWTPに関する質問がなされた。また、今回の実験で計測されたWTPは、個人によって反応時間にばらつきが生じることが報告されているため、最適となる遅延時間を個人ごとに選択することで脳機能を特定する新手法「Personalized adaptive GLM」を用いた解析が行われた。