富士通は4月20日、AI(Artificial Intelligence:人工知能)技術を素早く試すことを目的としたクラウドベースのAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi(コヅチ) (code name) - Fujitsu AI Platform」の提供を開始することを発表し、説明会を開いた。同日よりAIイノベーションコンポーネントおよびAIコアエンジンをグローバルに公開する。なお、利用者は基本的に無料で利用できるという。
プラットフォームの名称は、昔話に登場する、振ることで欲しいものが次々に出てくる「打ち出の小槌」に由来する。このプラットフォームは、自社技術だけでなく他技術領域を組み合わせて課題を解決する際に必要となる、Best-of-Breed型のコンポーネントを搭載し、AIの信頼性を担保しながら提供するという。
同社は、強みとする大規模並列コンピューティング技術をベースに、AIコアエンジンや他社技術を組み合わせて、顧客の価値提供を支援するAIイノベーションコンポーネント開発を促すプラットフォームとして展開する。プラットフォーム上では、データの生成やモデルの生成などを組み合わせて、複数のユースケースをカバーできる粒度でパッケージしコンポーネントとして提供する。
AIイノベーションコンポーネントは、富士通のIPだけでなく、他社の技術やサービス、OSS(オープンソース・ソフトウェア)などと組み合わせることで、スピーディな展開を可能としている。ユーザーは技術の調査や選定のプロセスが不要となり、迅速にPoC(Proof of Concept:概念実証)を開始できる。
説明会では、同プラットフォームを用いた開発の例として、「作業者分析」と「レジ不正監視」が紹介された。作業者分析は、工場や製造現場における作業者の見守りや、作業ごとに要する時間の計測、危険姿勢の検知などが可能だ。
映像から人のさまざまな行動を認識可能なAI技術「行動分析技術 Actlyzer」と、エッジとクラウドをつなぐMODEのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)プラットフォームを組み合わせて、作業者分析のAIイノベーションコンポーネントを作成している。
レジ不正監視は8月に公開予定だ。このコンポーネントは、カメラ映像からスキャン漏れや不正な会計を検知する。人と物の位置関係を検知するHOID(Human-Object Interaction Detection)に加えて、大規模学習したFoundation Modelに基づく商品認識エンジン、人物の属性を推定するエンジンなどを組み合わせることで、開発したという。
その他、スマートファクトリを支える不良品検出や、スマートストアにおける購買行動分析、スマートシティのための不審行動検知のためのAIイノベーションコンポーネントを公開する。
富士通研究所の内田大輔氏は、「Linuxとの連携によりOSS化を進めながら、世界の開発者とAI技術を進化させていきたい。当社はこれから、打ち出の小槌のようにAIイノベーションコンポーネントやAIコアエンジンを次々に公開していく予定なので、期待してほしい」と述べていた。