富士通は4月19日、スーパーコンピュータを活用した技術開発を行うスペインの研究開発機関であるBarcelona Supercomputing Center(以下、バルセロナスーパーコンピューティングセンター)と共に、個別化医療および量子分野の2領域における共同研究契約を4月19日に締結し、5月から研究を開始することを発表した。

現在の医療、特にがんなどの精密検査においては、ゲノム情報や病理画像、放射線画像内の組織や器官の特徴などの個々の診断結果に基づいて病気を判定しているため、複数の診断結果を組み合わせて精密医療を実現するマルチモーダルなヘルスケアデータの活用が重要だ。

そこで両者は、バルセロナスーパーコンピューティングセンターのゲノム関連技術や計算生物学における専門知識と、富士通のゲノム情報を解析可能なAI(Artificial Intelligence:人工知能)、さまざまなデータから重要な因果関係を網羅的に抽出し新たな発見を導く因果発見技術、大規模HPCシステム上での計算処理の設計および高速化といった技術を融合し、大規模なグラフ構造の医療データを実現することで、精密医療のための次世代大規模マルチモーダルAIの創出を目指す。

具体的には、ゲノム解析や診療データ、画像データなどと、生物学的プロセスおよび細胞相互作用のシミュレーションモデルを組み合わせて、個々の患者のあらゆる医療データを基にマルチモーダルAIによる解析を通じて、精密な個別化医療を実現するとのことだ。

一方の量子分野においては、バルセロナスーパーコンピューティングセンターが持つTensor Network技術を用いて量子回路を縮約し計算量を削減することで、従来と同程度のメモリ容量ながら大規模な量子回路計算の実行が可能な量子シミュレータの実現を目指すという。

量子シミュレータシステム上にTensor Network技術を実装し、大規模な分子のエネルギー計算やより正確な市場予測など、材料や金融といった分野における実問題を解決するための量子アプリケーションの開発を行う予定だとしている。