富士通は4月19日、人の行動をデジタルツイン上に再現し人々の行動の変化を予測して施策の効果や影響を事前に検証可能とする「デジタルリハーサル技術」を開発したことを発表した。また、英国でシェアードモビリティ事業を展開するBerylの協力のもとで、ワイト島におけるシェアードeスクーターサービスの運用を改善する施策を目指す実証実験を4月1日から開始していることを明らかにした。
行動経済学とAI(Artificial Intelligence:人工知能)を組み合わせたデジタルリハーサル技術は、人の行動の非合理性に加えて、天候などの間接的な影響要因も含む人の行動モデルをAIで生成している。実際の都市を再現したデジタルツインと融合させることで、天候や周辺環境などの条件変化や施策による人の行動の変化を予測できるようになるという。
行動経済学においては、人は事象が発生する確率の高低を過小評価する一方で、損失を過大評価し回避する傾向(プロスペクト理論)が知られる。このような非合理的な行動特性に加えて、天候などの間接的な要因が個人の選択に与える影響の特徴を、さまざまな属性データや天候データを用いてAIに学習させ、人の行動選択モデルを開発している。
これにより、イベント開催時における周辺交通機関を利用する人の動線や、事故発生など交通状況に応じた人の行動の変化に伴う影響を、人の心理を踏まえながら高い精度で検証できるようになると期待できるとのことだ。
富士通とBerylは実証実験として、英国ワイト島においてエリアごとの人口などの統計データや天気などのオープンデータ、島内の特定エリア間を移動した人数や時間帯といった人流データ、eスクーターの移動データを用いて行動選択モデルを生成し、デジタルリハーサル技術を用いた実証システムを構築する。
このシステムを活用して、地域住民をはじめ人が移動する時間帯や場所、ルートなどを予測しつつ、島内におけるeスクーターの配備場所や数の変更、特定の場所への返却による使用料の割引などの施策が有効かを検討する。また、運用コストの削減や移動手段の選択変化による二酸化炭素排出量の削減につながるかも確認するという。