新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月17日、NEDOの「余剰バガス原料からの省エネ型セルロース糖製造システム実証事業」の一環で、東レとDM三井製糖がタイにおいて、製糖工場で発生するサトウキビの搾りかす(バガス)などを原料として、食糧と競合せず各種バイオ化学品の共通原料となる植物由来の「非可食糖」を製造するシステムの実証に成功したことを発表した。

  • (上)膜分離技術を用いたバガスからの非可食糖製造フロー。(下)非可食バイオマスが化学品原料になるまでの概念図

    (上)膜分離技術を用いたバガスからの非可食糖製造フロー。(下)非可食バイオマスが化学品原料になるまでの概念図(出所:東レWebサイト)

タイ政府は「石油代替エネルギー開発計画(AEDP2015)」で再生可能エネルギー電源比率の引き上げを目標に掲げるとともに、今後の成長戦略を示す「タイランド4.0」で、バイオ化学品産業を将来の産業基盤の1つとして位置付けており、タイ国内で同産業が今後活発化していくことが見込まれている。

また、世界トップレベルのサトウキビ生産量を誇るタイでは、砂糖を生産する際に大量のバガスが排出されるが、そのほとんどは有効利用されることなく焼却処分されており、PM2.5などの大気汚染物質を発生させるため、環境問題を含む大きな社会課題となっているという。

一方、こうした余剰バガスを糖化させてバイオエタノールや乳酸などのバイオ化学品を製造すれば、食糧と競合することがなく、植物由来の非可食糖の原料として有効利用することが可能だ。ただしこの操作は消費エネルギーが大きく、また糖化酵素費も高価なため、より効率的なシステムになるように改良することが、製造技術の普及を図る上で必要とされている。

このような背景を受け、NEDOでは2016年より、先述した余剰バガスの利用に関する実証事業を実施中だ。同事業において、東レとDM三井製糖が2017年にタイの企業「Cellulosic Biomass Technology」の事業所に、非可食糖製造技術の実証プラントを建設した。同プラントは2018年8月から2022年12月まで運転が行われ、2023年3月までに製造工程における省エネ効果や生産物の性能、システムの経済性などの検証や評価が実施された。

  • (左)可溶性固形分に対するグルコース純度(右)CBT社非可食糖製造技術実証プラント(タイ・ウドンタニ県)

    (左)可溶性固形分に対するグルコース純度(右)CBT社非可食糖製造技術実証プラント(タイ・ウドンタニ県)(出所:東レWebサイト)