産業技術総合研究所(産総研)は4月12日、約9万年前に発生した阿蘇火山史上4回目の大噴火である「阿蘇4噴火」により噴出した大規模火砕流の分布図を作成したことを発表した。なお同分布図は、産総研 地質調査総合センター「大規模火砕流分布図」から無償ダウンロードが可能になっている。
同成果は、産総研 活断層・火山研究部門大規模噴火研究グループの下司信夫研究グループ長、同・宝田晋治上級主任研究員、同・星住英夫研究主幹(研究当時)らの研究チームによるもの。
日本列島は4つのプレートがひしめき合うという地質学的特徴を持つことから、地震の多発地帯であることに加え、火山噴火も多い。縄文時代早期にあたる約7000年前より以降、日本国内では巨大噴火は発生していないが、約3000万年前に日本列島が大陸から独立して以降、とてつもない大噴火が何度か起きたことが地質学的証拠からわかっている。巨大噴火は、巨大地震と同様に、将来必ず発生すると考えられており、広大な地域を火砕流により壊滅させ、また国土の全域に及ぶ火山灰災害を引き起こすことから、警戒が必要だ。
日本有数の活火山として知られる阿蘇火山は、約27万年前から約9万年前までの間に、巨大噴火を4回発生させ、大量の火砕流や火山灰を噴出したことがわかっている。約27万年前が阿蘇1噴火、約14万年前が阿蘇2噴火、約13万年前が阿蘇3噴火、そして約9万年前が阿蘇4噴火と呼ばれており、中でも阿蘇4噴火は、過去10万年間で日本最大、世界でも2番目に大きいとされる巨大噴火だという。
その阿蘇4噴火の火砕流による堆積物は、九州中部から北部を広く覆い、一部は阿蘇カルデラから約170kmも離れた山口県内にも分布しているほどである。しかし、同堆積物の詳細な分布範囲やその構成物の特徴などは、断片的に情報が散在しているのみで、これまでまとめられていなかったという。
そこで今回はこの巨大噴火の全体像を解明するため、火砕流堆積物の分布情報の集約と現地調査の結果をまとめた「阿蘇4火砕流堆積物分布図」を作成。さらに、産総研が運用する地質調査総合センターのWebサイト「大規模火砕流分布図」で公開したとする。