シスコシステムズはこのほど、同社のネットワークやクラウドビジネスに関する説明会を開催した。昨今、企業においてクラウドシフトやマルチクラウドが進む中、ネットワークやクラウドの管理は複雑さを増す一方だ。同社はプラットフォームをシンプルにすることで、この課題の解決を目指している。
ITのシンプル化でデジタル変革の支援を
米シスコシステムズ エグゼクティブ バイス プレジデント 兼 ネットワーキング担当 ゼネラル・マネージャー ジョナサン・デイヴィッドソン氏は、ネットワークビジネスにおけるビジョンの一つとして、「ITのシンプル化」を紹介した。
「企業でハイブリッドワークが行われる中、アプリケーションがパブリッククラウド上にある一方、データベースはプライベートクラウドにある。インフラが複雑になっており、その課題を指摘することが難しくなっている」(デイヴィッドソン氏)
デイヴィッドソン氏は、同社ができることはデジタル変革の支援であるとして、そのために、プラットフォームのシンプル化に取り組んでいると説明した。プラットフォームを統合することで、インフラの管理を容易にする。具体的には、同一の管理インタフェースで、オンプレミスのリソースとクラウドのリソースを扱えるようにしている。
例えば、 クラウド ネットワーキング プラットフォーム「Cisco Meraki」で、Catalystスイッチをモニタリングと管理が可能になった。デイヴィッドソン氏は、「数カ月前にGAになったが、継続的に採用が増えている。これからは、マネージドCatalystにしていく」と語っていた。
続いて、デイヴィッドソン氏はネットワーク分野の今後の展開として、SD-WANの増加についても言及した。同社は、インターネットとWANのパフォーマンスを可視化できるツールとして、「ThousandEyes」を提供している。同氏は、「WAN Insights」について、「エンタープライズの企業と連携して、AIのアルゴリズムを開発し、それを用いてWANをモニタリングしている。現在、予測するところまできている」と説明した。
「ThousandEyes」では、「サジェスチョンを提供するモデル」と「自動的にダイナミックに変更するモデル」が用いられているという。
加えて、デイヴィッドソン氏はSASE(Service Edge Secure Access)製品「Cisco+ Secure Connect」を紹介した。同製品は、Cisco Merakiのダッシュボードを介して管理でき、ネイティブのCisco Meraki Secure SD-WANとCisco SD-WAN (vManage) の統合が可能。
デジタル変革における重要なテクノロジーはIoT
デイヴィッドソン氏は、デジタル変革について重要なテクノロジーとしてIoTを挙げ、同社のIoTに対する取り組みを紹介した。「クルマがネットワークにつながりだしている。この接続はまだ始まったばかりで、これから増えていく。その中で、音楽、アプリケーションといったサービスのチャンスがあり、高い期待を持っている」(同氏)
デイヴィッドソン氏は、IoT分野における次世代のトランスフォーメーションとして、「インダストリ4.0」を挙げた。同氏は、インダストリ4.0の世界について、次のように語った。
「工場では、レガシーなプロトコルをセキュアな環境で展開され、自動運転の車など、完全に自動化されるようになる。ITとOTが融合され、工場の脆弱性を検出して、対処できるようになる」
「インダストリ4.0」においては、「さまざまな接続性に対し、目的に応じた技術をそろえることが重要。大きな工場ではローカル5Gを使うことになるかもしれないが、機械が頻繁に稼働してなければ、有線のほうがいいかもしれない。目的に対し、どんなテクノロジーが必要かを検討する」という。
またデイヴィッドソン氏は、データセンターの仮想化と同様、工場の仮想化というニーズが出てきていることから、工場を統合して拡張する中で、セキュリティが重要になる。そのため、顧客にとっても投資領域になることから、同社ではOTエンジニアに対し、特にセキュリティについて教育しているそうだ。
最後に、デイヴィッドソン氏は、「現在、30億人がネットワークに接続しておらず、デジタルエコノミーを享受できていない」という社会課題を指摘した。この課題に対し、「コミュニティを作って個々人に力を与え、すべての人がデジタルエコシステムに参画できるようにする。われわれはここに注力しており、デジタルデバイドを埋めていく」と、同社の今後の展望を語った。