ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)は、10年ほど前からデジタルを活用した新しい金融サービスを検討してきた。その一つの成果として生まれたのが、2021年にサービス提供を開始した「みんなの銀行」だ。デジタルで銀行を再デザイン・再定義し、銀行の新しい機能を模索することを目的に設立され、国内初のデジタルバンクとして注目を集めた。

2月22日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 DX Frontline for Leaders 変革の道標」に、みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏が登壇。「みんなの銀行のデジタルバンキング戦略とは ~『みんなの銀行』 が目指す新しい銀行のカタチ~未来の銀行を『今』創ったら、どんな銀行になるか?」と題し、同社が考える新しい銀行の在り方や金融サービス、その具現化に向けて進めてきた施策について解説した。

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新規ビジネスを打ち出すために必要な3つのステップ

講演冒頭で永吉氏は、この数年間の世の中の変化を写真で見せながら説明した。約8年の間にカメラやガラケーはスマホに変わり、会議の場はコロナ禍の2年ほどでWeb上へと変化した。こうした変化の中核には、デジタル化とそれを使う人の価値観や行動の変化があり、結果として「ものすごいスピード感で世の中が変わっている」(永吉氏)のだ。そんな中で、銀行も顧客のニーズを取り込んだサービスの改善に努めてはいるが、銀行法という規制の中では金融以外の新たなチャレンジが難しいと同氏は言う。一方で銀行以外の事業者からは、“○○ペイ”やネット専業銀行などの新サービスも登場している。

  • 永吉氏が示した写真で見る変化

「こうした変化は銀行にとって脅威ではありますが、変化の波を掴むことができれば新しいビジネスの活路を見出せるのです」(永吉氏)

そこで新規ビジネスを打ち出すにあたり、もはや不可欠なのがDXだ。その実践に向けては3つのステップがあると永吉氏は話す。まず情報のデジタル化であるデジタイゼーション、次に業務のデジタル化であるデジタライゼーション、そしてこの2つのステップの後に、新たな事業を生み出したり既存事業を抜本的に改革したりするDXが来るのだ。銀行に当てはめて言えば、お客さまが店頭で紙の帳票に手書きして押印するプロセスをタブレットでの入力に変更することで、データが処理が自動化され、行員のオペレーションを削減するところまでが1つ目、2つ目のステップで、その後、DXに取り組むことになる。

FFGが同時に進める2つのDX

これらを踏まえた上で、FFGでは、既存の銀行のDXと新機軸のデジタルバンクの創設という2つのDXを同時に進めている。

  • FFGにおけるDXの取り組み

既存事業については、グループ銀行の業務を高度化することを目指す。リアルな存在の銀行ではいまだに人の手を介したアナログ的な業務が8割ほどを占めているが、人口減少が加速し、他業種からの金融参入も増加してくると、これまでと同じやり方では効率的なビジネスは難しくなる。そこで、アナログとデジタルの割合を逆転(デジタルで行う業務を8割まで増やす)していく方針だ。

「DXを推進し、筋肉質な経営体制にしていくというのが既存事業のDXです」(永吉氏)

一方、同グループが新規事業として立ち上げたのがみんなの銀行だ。時間をかけずにDXを進めるには、「銀行ビジネスそのものを刷新し、ゼロから新しいチャレンジをすることが最適だと考えた」と永吉氏はその意図を説明する。新しい金融サービスとしては、銀行以外の事業者がシンプルな金融サービスを提供したり、銀行商品を代理提供したりするフィンテックも存在しているが、そのような中でみんなの銀行はあえて銀行ライセンスを取得して運営する新しい形態の銀行だ。特に、スマートフォン上で全てのサービス利用が完結することを特徴とし、銀行の中でも「デジタルバンク」として分類されている。

既存体制の制約がなければ、最初からDXは進められる

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