半導体チップを製造するには、成膜からリソグラフィやエッチング、クリーニング装置など多種多様な製造装置が必要です。大規模な製造では、半導体メーカーは、3Dトランジスタの製造で使用するフィンエッチなど、同じタイプのチャンバーを使用して特定の処理手順を実行しなければなりません。同じフリート内のウェハロットを一様に処理し、各チャンバーがその他すべてのチャンバーとまったく同じように機能することが理想です。ただし、実際には、工程の成功を左右するさまざまな制御パラメータが微妙に異なるため、性能はチャンバーごとに異なります。圧力や温度、電源供給、表面状態を含む全てのパラメータが最適化される必要があります。

チャンバーマッチングの課題

性能を均一に近づける工程は、チャンバーマッチングと呼ばれています。半導体チップデバイスの微細化が進むにつれ、工程公差がますます厳密になり、チャンバーマッチングに関連した課題が増えています。従来の方法には、「ゴールデンチャンバー」法またはサブコンポーネントマッチングが含まれていました。ゴールデンチャンバー法とは、あるチャンバーを基準として、同じ結果が得られるように他のすべてのチャンバーを調整するというものです。サブコンポーネントマッチングは、ハードウェアサブシステムに焦点を合わせて、各チャンバーが満たす必要のある厳しい公差仕様を定めます。この手法では、各チャンバーのすべての部品があらゆる点で同じであれば、チャンバー全体も同じになるということが前提になっています。これら従来の方法はいずれも、高度なプラズマ処理の複雑な物理的および化学的相互作用に関して限界があります。チャンバーの性能を均一にするには、スマートな装置とサービスが必要になります。

実証済みのソリューション

スマートツールの製作に対するラムリサーチのアプローチは、ツールによる自己認識、適応力、セルフメンテナンスを可能にすることです。ラムリサーチのデータアナライザ「Equipment Intelligence」は、エッチングプラットフォーム「2300」のチャンバーのフリートマッチングとビッグデータ分析に幅広く使用されています。世界中の多くの工場において、チャンバーマッチング性能の改善、チャンバーの問題の迅速な解決、稼働時間の改善、平均クリーン間隔(MTBC)の改善が報告されています。

このアプローチでは、ウェハ処理でのツールセンサ出力の大規模なデータセットに注目し、チャンバー全体の自然分布を特定して、不整合のチャンバーを検出し、根本原因を調査して修正します。この方法は、チャンバー内またはチャンバーサブシステム内の多数の信号に注目する、ビッグデータ多変量機械学習手法です。顧客の工場の情報と組み合わせると、チャンバーマッチングに必要な時間を数週間から数日に短縮できます。

  • ラムリサーチの2300エッチングシステムのイラスト

    (それぞれ6つのチャンバーを有する)ラムリサーチの2300エッチングシステムのイラストとラムリサーチのEquipment Intelligenceデータアナライザによるビッグデータ機械学習分析前後の処理分布

データアナライザ「Equipment Intelligence」の最新バージョンは、プラズマ励起化学気相成膜(PECVD)と原子層成膜(ALD)チャンバーのために設計されました。エッチングチャンバーに関して、PECVD/ALDチャンバーのウェハフローシナリオの違いに対応しています(マルチペデスタルとシングルウェハチャンバー)。解析スキームを使用することで、複数のステーションプロセスモジュール間の個々のウェハの動きを追跡できます。このソフトウェアは、PECVD/ALDウェハフロー固有の特徴であるレシピブロックやサブレシピ、複数回繰り返すレシピに対応しています。

  • ラムリサーチの4ステーション(4つのウェハを同時に製造)チャンバー付きPECVD処理ツール

    ラムリサーチの4ステーション(4つのウェハを同時に製造)チャンバー付きPECVD処理ツール

仮想センサのイノベーション

このスマートな製造装置のアプローチは、大量生産(HVM)を行う顧客のサイトで活用されており、予防保守サイクルの延長や稼働時間の増加など、顧客の重要な要件を加速させています。これには、回帰モデルをベースとした予測管理チャートの作成および導入や、基準を予測するための分類モデルの使用、潜在的問題の早期警告と迅速な解決を可能にするために主要な職員に送信する通知などが含まれます。仮想計測に基づく回帰モデルを使用することによって、生産性能の予測の他にも、生産傾向の根本原因を容易に調査することが可能になります。ラムリサーチのデータアナライザは、チャンバーマッチングや予定外のダウンタイムなど、装置に関する複数の重要な問題を迅速に診断するために、後から対応する方式でも使用されています。

これらのビッグデータ機械学習手法をHVM半導体製造で使用する主な目的の1つは、これまで以上に加工ツールでさらなる生産性(より低コストでより多くの良質なウェハを生産)を実現することです。

結論

データは、チャンバーマッチングの課題に対応するスマートな製造装置とサービスの土台となります。データアナライザ「Equipment Intelligence」は、ラムリサーチの装置に関するデータを顧客工場内に保存しています。データの整合性が維持され、顧客はデータを管理しアクセスできるようになります。この柔軟な土台が、HVM環境で複雑なシステムを維持するという問題や、装置の歩留まりに必要な厳しい工程公差に対応するソリューションを実現します。