Omdiaの半導体調査担当シニアディレクタのMichael Yang氏が、「世界中の経済がパンデミックからの回復を続けているが、半導体業界も正常に戻る方法を見つけなければならない」として、そのために注目すべき半導体を取り巻く5つのトレンドを同社のブログで示した。
1. 収益の減少
2022年の半導体市場は過去最高の5957億ドルを記録したが、Omdiaの調査では、前四半期比で売上高が減少し続けており、第4四半期に至っては、売上高は前四半期比で9%減、前年同期比18%減の1324億ドルにとどまった。
新型コロナのパンデミックが電子機器の需要を加速させた結果だが、現在、世界中で不安定さが増し、政治的緊張の高まりと併せ、不確実性の高まりから消費者心理は冷え、企業は次に起こる出来事への懸念から予算を抑えている。
こうした状況における事業運営の課題は2023年にわたって続くと予想されるため、Omdiaでは、2023年の半導体市場が前年比8%減となると予測している。
2. 設備投資の削減
半導体企業の設備投資(CAPEX)も、売り上げの減少と不確実性の増大に伴い減少すると予想されている。2022年の半導体企業の設備投資額は、Omdiaが2000年ころの調査開始以来の最高レベルに達し、半導体売上高に占める設備投資額の割合は24.9%となった。
Omdiaの過去20年における売上高に占める設備投資額の割合平均19.4%を大きく上回る結果だが、2023年は売上高の減少に伴い、設備投資額が売上高に占める割合も20%を切ると予想される。
3. コンポーネント価格の下落
2022年後半、プロセッサやメモリなどの主要半導体コンポーネントの価格が大幅に下落した。例えばDRAMは、過去4か月で40%減となった。2023年も、価格低下がほかの半導体製品カテゴリにも影響を与えると予想されているが、半導体は景気循環産業であり、いずれ市場は回復することを意味することに注意する必要がある。
4. 需要を喚起しようとする企業
顧客の購入意欲減退に対処するために、企業は自社製品の需要を刺激するための取り組みを強化する可能性がある。例えば2023年初頭に電気自動車(EV)メーカーのテスラは、EVの価格を最大20%引き下げたほか、フォードも米国にてEV(マスタング・マッハE)の値下げを行った。自動車、特にEVは電動化と電子化を背景に、半導体分野にとって重要なセグメントになりつつある。
2023年については、他のセグメントでも何が起こるかを注意深く見る必要がある。例えば半導体市場にプラスの影響を与える可能性のあるセグメントとしては、コンポーネント数が多く、近年の半導体市場をけん引してきたスマートフォン(スマホ)がある。スマホ市場の回復は、半導体企業にとってのゲームチェンジャーになる可能性がある。Omdiaでは、データセンターならびにPC市場の改善にも注目しているという。
5. インセンティブの助けを借りて経済を後押しする国々
もっとも重要な需要の原動力は、パンデミックからの回復に向けて各国が講じる積極的な経済施策である。そうした中、理由はさまざまだが、世界各国の政府も半導体産業を後押ししている。米国は、半導体の研究開発、製造、労働力開発に500億ドル以上の支援を行うほか、EUも同様の措置を講じることを計画、台湾と日本も独自施策で国内半導体産業の支援を目指している。