10兆円規模のファンド(基金)の運用益により支援を受ける「国際卓越研究大学」に、早稲田大学など10校が申請した。文部科学省が4日発表した。世界トップの研究水準実現の潜在力を持つ大学を選ぶもので、数校程度を選定し、来年度の助成開始を目指す。

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    「国際卓越研究大学」に申請した早稲田大学=東京都新宿区

卓越大学を3月末まで公募した。申請したのは受け付け順に早稲田大学、東京科学大学(=仮称、東京工業大学と東京医科歯科大学が来年度をめどに統合)、名古屋大学、京都大学、東京大学、東京理科大学、筑波大学、九州大学、東北大学、大阪大学。国立8校、私立2校となった。

審査を行う「アドバイザリーボード」の構成員として、海外を含む識者や企業人の10人も発表した。

海外のトップレベルの大学が近年、豊富な資金を背景に研究力を高めているのに対し、国内では論文の質や量などの低下が指摘されている。こうした中、政府は、大学には世界トップクラスの研究者の獲得、若手研究者の育成、研究者の研究時間確保のための負担軽減などが求められるとして、ファンドを創設した。独自基金の設置なども含め、取り組みを一体的に進められる研究大学の早急な実現を目指す。地域の中核大学や特定分野に強い大学を強化する「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」などと連携した施策として進めている。

ファンドは科学技術振興機構(JST)が昨年3月に運用を開始している。運用益の年最大計3000億円を助成し、日本の研究力強化を図る。

文科省の資料によると、審査は(1)国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力、(2)実効性が高く、意欲的な事業・財務戦略、(3)自律と責任のあるガバナンス(統治)体制の観点から行う。他の論文に多く引用される優れた論文の数や、企業などからの研究資金の受け入れ実績、新たな学問分野や融合領域に迅速に対応しているかなどが具体的な基準となる。大学の実績だけではなく、世界最高水準の研究大学の実現に向けた変革へのビジョンやコミットメント(約束、誓約)の提示に基づくという。

岸田文雄首相は2021年10月の臨時国会の所信表明演説で、成長戦略の第一の柱が科学技術立国の実現だとした上でファンド創設を言明しており、政府の成長戦略の中の重要政策となっている。

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