日本IBMは4月4日、メインフレームの「IBM z16」と「IBM LinuxONE 4」のシングルフレームモデルとラックマウントモデルを発表し、同日にメディア向けにオンラインで説明会を開催した。いずれの製品も5月17日(米国時間)に出荷を予定している。
メインフレームは“塩漬け”されているわけでない
同社によると、昨今メインフレームを取り巻く環境として、独自調査の結果を引き合いに出し、グローバルにおいて77%の企業がハイブリッドクラウドを利用し、80%の企業がパフォーマンス、レイテンシ、セキュリティ、コンプライアンスなどを動機にパブリッククラウドから、プライベートインフラストラクチャに戻すことを検討している。
2022年4月に発売されたIBM z16のマルチフレームモデルは、大規模なトランザクション処理中のリアルタイムAI推論と耐量子暗号が特徴。同9月に提供開始されたIBM LinuxONE Emperor 4は拡張性、パフォーマンス、セキュリティを提供しつつ、エネルギー消費量、データセンターの設置面積削減を実現しているという。
日本IBM 執行役員 テクノロジー事業本部 メインフレーム事業部長の渡辺卓也氏は「オンプレミスとクラウドそれぞれのメリットをどのように発展させ、将来にわたるビジネス競争力やミッションクリティカルに耐えうる真のハイブリッドクラウド基盤が求められている」と述べた。
また、同氏は「メインフレームは塩漬けされているわけでなく、ハイブリッドクラウド全体のアーキテクチャの中で活用が進んでいる。2022年時点での出荷処理能力は過去10年間で3.5倍以上に成長しており、レガシーだと塩漬けにされて稼働するワークロードが減少するならば、こうした数値にはならない」と強調する。
新モデルについて渡辺氏は「リアルタイムAI推論と耐量子暗号が特徴というのは、昨年発表したz16のマルチフレームと同様だが、新モデルはサステナビリティにも重点を置いている。ライフサイクル分析手法であるPAIA(Product Attribute to Impact Algorithm)にしたがって作成されたレポートを公開し、製品の設計、製造、使用、輸送、廃棄のどの段階がCO2排出量に影響を与えるかを評価する一助となっている」と説明した。
そのため、新モデルはパーティションレベルの電力監視や追加の環境指標といった機能を備えている。例えば、ヨーロッパの金融機関では16台のx86でサーバで構成するOracleのワークロードをIBM LinuxONEに統合した結果、コア数は15:1(x86:LinuxONE)、電力消費量は70%削減、ソフトウェアライセンス数が60%削減されたという。
また、Linux ワークロードを条件や設置場所が類似する比較対象のx86サーバで実行する代わりに、IBM LinuxONE Rockhopper 4に統合すると、エネルギー消費量を75%、設置面積が67%削減できるとしている。
そのほかのサーバやストレージなどを組み込めるラックマウントモデル
ラックマウントモデルは、IBM z16のすべてのモデルと同じ社内基準で設計・テストし、標準の19インチラックおよび配電ユニットで使用できるように設計されている。
また、分散環境において、1つのラックに他のサーバーやストレージ、SAN、スイッチとともに設置を可能としており、AIモデルのトレーニングなどの複雑なコンピューティング向けに、コロケーションとレイテンシの両方を最適化するようにも設計されているという。
さらに、クラウドネイティブを実現するために2023年第3四半期の提供開始に向けて「メインフレームDevOpsソリューション」の準備を進めている。渡辺氏は「クラウドネイティブな技術にもとづく開発スタイルを、メインフレームのアプリケーションにも適用が可能になっているため、こうした取り組みを進めている」と説く。
同ソリューションは、従来からメインフレームの開発テストソリューションとして持つ製品群をIBM Cloud上で提供しているが、ハイブリッドクラウドに向けてDevOpsのソリューションをIBM Cloud上で提供可能なものは、すべて展開していくという。
一方、人材育成としてコミュニティ「メインフレームクラブ」を立ち上げ、メインフレームを支える技術者同士をつなぎ、将来をリードする次世代の技術者を育成するために世代を超えて学び合うというものだ。
第1回目として、4月21日(金)15:00~17:00に日本IBM本社(箱崎事業所)で開催が決定しており、今後は若手技術者向けハンズ音や国内外見学ツアー、合宿などの企画を予定している。