富士フイルムと神戸大学は4月4日、AI(Artificial Intelligence:人工知能)技術を活用して、腹部の造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を開発したことを発表した。
同技術では、膵臓がんの直接所見である腫瘤だけでなく、間接所見である膵管の萎縮や拡張、狭窄などを検出可能だ。早期の膵臓がんの検出を可能にすることで、早期治療による予後の改善を支援するとともに、専門医の地域偏在や医師不足による医療格差の解消にも寄与するという。
膵臓がんでは、特に初期状態において、直接所見である腫瘤だけでなく膵臓の萎縮や、膵管の拡張および狭窄など臓器自体の形状にも着目する必要がある。そのため膵臓の厚みや膵管の太さなどを認識することが重要なのだが、同社の解析技術は臓器セグメンテーションにより形状の認識を可能にしており、解剖構造も確認できる点が特徴的だ。
膵臓がんは、発生初期は症状が出にくいため早期発見が難しい。近年は高齢化に伴い患者数が増加しており、死亡者数は国内で年間約3万人とされる。がんが進行してから発見される例が多いため、5年生存率は12.5%と予後は極めて不良。
その一方で、前駆病変から膵臓がんに至るまでには数年間かかることがこれまでの解析から明らかになっており、早期発見の機会もあると見込める。そこで両者は、AIを活用して初期のがんを検出可能な診断支援システムの開発を行ったとのことだ。
富士フイルムは、今回確立した技術を応用して、一般的な検診や人間ドックで撮影される非造影CT画像からも膵臓がんが疑われる所見を検出する技術の開発を今年度中に進める予定だとしている。