産業技術総合研究所(産総研)は3月31日、現在、産総研を中心に福井県吉田郡永平寺町で実証実験を実施している、遠隔型自動運転システムによる無人自動運転移動サービスの車両を高度化し、遠隔監視のみが必要となるレベル4の自動運行装置を備えた車両として、3月30日に国内で初めて国土交通省より認可を受けたことを共同で発表した。
同成果は、産総研 情報・人間工学領域 デジタルアーキテクチャ研究センターの加藤晋首席研究員らの研究チームによるもの。
自動運転には5つの段階があり、そのうちレベル1の運転支援・レベル2の部分運転自動化については、ドライバーが運転に責任を負うため厳密には自動運転ではないとされる。そしてレベル3からレベル5までが、システムが監視する(運転を担う)自動運転だ。レベル3とレベル4では、自動運行装置の保安基準などに違いがある。
レベル3の保安基準は、自動運行が困難な状況(故障、天候の急変など)が生じた場合に、ドライバーに運転引き継ぎの警報を発するというもの。そのため、ドライバーの直接の搭乗、または遠隔からの運転機能が必要となる。一方のレベル4は、同じように自動運行が困難な状況が生じた場合に「安全に停止する」仕組みを持つ。自動運行装置によって安全に停車させるため、ドライバーの直接の搭乗や遠隔運転を必要としないものである。
産総研は、遠隔監視・操作型の自動運行装置を備えたレベル3の車両について、2021年3月に国内初の認可を受け、同車両を用いて福井県永平寺町に位置するえちぜん鉄道の廃線跡地の町道「永平寺参ろーど」のうち南側約2kmの区間において、同月より本格運行(実証実験)を実施してきた。
そして産総研は今回その延長として、経済産業省および国土交通省の令和4年度「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実証プロジェクト)」を幹事機関として受託。引き続き永平寺町におけるレベル4の無人自動運転移動サービスの社会実装に向けて、ヤマハ発動機、三菱電機、ソリトンシステムズとともに、研究開発と実証を進めている最中だとする。
レベル3では上述したように、走行環境条件を満たさなくなる場合や故障発生時などの緊急対応を想定し、運転を引き継げる運転者の配置が必要だったことから、これまでの永平寺町の実証実験では、遠隔監視のドライバーが配置されていた。
それに対して今回のレベル4では、自動運行装置が自動運転車両の周囲の状況を判断し、出発・停止などの運転作業や緊急時の自動停止などを実施するため、運転者の配置は不要だ。実証実験では引き続き遠隔監視は行われるというが、主に自動運転車両に不具合などが生じて自動停止した後の対応を担うことになる。また、これにより遠隔監視者1名が3台の自動運転車両を運行することが可能となり、運転の負担の大幅な軽減ができるとしている。
産総研がヤマハ製電動カートをベースに開発した自動運転車両は、道路に敷設された電磁誘導線とRFIDによりガイドされる経路上を、最大速度12km/hで自動走行することが可能だ。走行可能な条件としては、気象状況が「周辺の歩行者などを検知できない強い雨や降雪による悪天候、濃霧、夜間などでないこと」、交通状況が「緊急自動車が走路に存在しないこと」、環境条件が「路面が凍結するなど不安定な状態でないこと」と設定されている。
今後、4月に改正される道路交通法による特定自動運行に係る許可の取得により、車両内無人でのレベル4の自動運転移動サービスが可能となる。研究チームは、移動サービスの開始に向けて、サービス面での実証実験などを行う予定としている。