近畿大学(近大)は3月28日、水星・金星・地球・火星の4つの地球型惑星の軌道と質量、および小惑星帯の軌道や質量などの特徴を解明するため、約46億年前の太陽系誕生時に存在した「原始惑星系円盤」(以下「円盤」)の進化を数値シミュレーションで検証した結果、地球型惑星と小惑星帯の形成に関する特徴を再現し、地球型惑星を生み出すが持つべき条件などが明らかになったことを発表した。
同成果は、近大 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻のソフィア・リカフィカ・パトリック准教授と国立天文台(NAOJ) 天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士講師の共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
太陽系においては、およそ46億年前に円盤の中でダストが徐々に集積し、内側領域で4つの地球型惑星が誕生。その同時期に小惑星帯も形成されたと考えられている。しかし、地球型惑星と小惑星帯の形成過程には、まだ謎も多い。その例には、水の起源や惑星ごとに軌道や質量が大きく異なる理由、小惑星帯にさまざまな特徴を持つ天体が混在している理由、さらには地球型惑星や小惑星帯の形成過程における木星や土星の役割などが挙げられる。
研究チームによると、こうした謎を解明するためのシミュレーションで、4惑星の特徴を単一のモデルで正確に再現できたものはこれまでになかったという。そこで研究チームは今回、数値シミュレーションで46億年前の太陽系を再現し、4惑星の軌道や質量、小惑星帯の主要な性質などを反映したモデルを作成したとする。
今回の研究はまず、異なる特性を持つ円盤を初期条件とし、微惑星の集積により形成される惑星、および残存する微小な天体(小惑星)の様子を数値的に再現することから始められた。そして解析の結果、最も重要な以下の3点が明らかになったという。
太陽系初期に、木星と土星が2:1の平均運動共鳴に近い配置にあったことで、円盤内天体の「カオス的な励起」が幅の狭い円盤を作り出し、地球型惑星と小惑星帯が形成されたことが示唆された。これは、原始惑星系円盤の質量減少を引き起こす、新しい機構の提案だという。なおカオス的な励起とは、運動に予測困難な不規則性(カオス性)が生じ、それが原因となって地球型惑星系で集積する微惑星などの小天体の軌道が励起状態となり、軌道が円・平面にある状態から外れることを指す。
火星や小惑星帯の小さな質量を再現するため、円盤の広がりは1.5天文単位以近(太陽から火星までがおよそ1.5天文単位)に制限される、という新しいシナリオが発見された。1.5天文単位以遠領域にある微惑星が枯渇することで、火星と小惑星帯の質量が小さいことを説明できるとする。
水星の軌道と小さな質量を再現するため、円盤は0.8~0.9天文単位以内の内部領域を持つことが示唆された。
上述した結果は、地球型惑星形成の新しいモデルとなり、円盤内での約1000万年にわたる不安定化、さらに続く力学的な進化の後、現在観測される軌道と質量を持つ4つの地球型惑星の形成までを再現できたとする。