ソフトバンクと住友電気工業(住友電工)は3月29日、5G(第5世代移動通信システム)を活用したスマート工場の実現に向けて協業を開始すると発表した。ソフトバンクが同日より提供を開始した法人向けの5Gマネージドサービス「プライベート5G」の対応端末として、住友電工が開発中の産業用5G端末を、2024年をめどに提供する予定。
ソフトバンクが提供するプライベート5Gは、企業や自治体などのさまざまなニーズに合わせて、個別にカスタマイズした5Gネットワークを提供するサービス。
まず、パブリック5Gの設備や電波を利用する「プライベート5G(共有型)」を提供する。プライベート5G(共有型)は、スタンドアローン(Stand Alone)方式の5Gの商用ネットワーク「5G SA」の特長であるネットワークスライシング(ネットワークを仮想化してリソースを分割し、用途や目的に適合したサービスを提供する技術)を活用し、ソフトバンクが提供する閉域接続サービスと連携することで、高品質かつ安全な通信を実現するとしている。
なお、ソフトバンクは、顧客の敷地内に専用の基地局や設備を設置して、高度なプライベートネットワーク環境を提供する「プライベート5G(専有型)」を、2023年度中に提供開始予定だ。
住友電工製の産業用5G端末は、工場内のさまざまなセンサーや設備、カメラとの接続インターフェースを備え、5Gミリ波にも対応している。防じん・防水機能を有し、環境条件の厳しい工場や屋外でも使用可能。また、エッジ処理のためにコンテナ型仮想化のプラットフォームを採用しており、5G端末とは異なるOS(オペレーティングシステム)上で開発したアプリであっても搭載・実行が可能とのこと。
ソフトバンクと住友電工は、5Gを活用したスマート工場の実現に向けた共同の実証実験を、2019年から継続して実施してきた。
2022年には、工場内に設置した4Kカメラで作業者の動きなどを撮影し、その高精細な映像を住友電工独自の映像圧縮技術であるAVP(AI-based Video Processing)によって圧縮した後、ソフトバンクの5Gネットワークを利用してクラウドサーバーに伝送し、AIによる映像解析を行う実証実験を実施。その結果、AVPの活用により、従来の圧縮方式と比較してデータ量を88%削減し、効率的に映像を伝送できたとしている。両社は今後、実証した技術の生産現場への適用を推進していく考えだ。