宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国土交通省国土地理院(国土地理院)は3月28日、JAXAが運用する陸域観測技術衛星2号「だいち2号(ALOS-2)」の観測データを基に作成された日本全国の「地殻変動地図」が、国土地理院の「地理院地図/GSI Maps」において同日より公開されたことを発表した。
だいち2号は、2014年5月にH-IIAロケット24号機によって打ち上げられ、設計寿命の5年、目標の7年を超えて現在も運用中。同機は合成開口レーダー(SAR)の「PALSAR-2」を備え、天候や昼夜の影響を受けずに地球の観測が可能だ。なお、森林を透過しての観測が可能な波長のLバンドが用いられている。今回、2014年8月から8年以上にわたって収集されたLバンドSARデータを用いて、国土地理院により、全国の干渉SAR時系列解析が実施された。
正確な干渉SAR処理を行うには長期的に安定した衛星の追跡管制(衛星の軌道高度での維持運用および軌道高度・姿勢の高精度での決定)と、高精度の軌道・姿勢情報を基にしたSARデータ処理技術が必要であり、JAXAと国土地理院の技術協力により実現された。これにより、初めて、全国の地殻の変動をくまなく詳細に捉え、日本全国の大地の動きを可視化する「地殻変動地図」が完成した。
だいち2号のSARデータの解析による全国の地殻変動は、「地理院地図/GSIMaps」から確認でき、火山活動や地盤沈下などによる地殻の変動の広がりを一目で把握することが可能だ。この変動情報を活用することで、測量の基準(国家座標)の維持管理や、地盤沈下調査などの空間分解能の向上につながることが期待されるとする。
JAXAは、今回の成果をさらに発展させ、日本全国の変動分布図の長期的な更新、および高精度な変動把握を継続するため、だいち2号での観測を継続すると同時に、後継機となる先進レーダー衛星「だいち4号(ALOS-4)」を打ち上げ(当初は2022年度中にH3ロケットで打ち上げ予定だった)、より広域かつ高頻度の観測を実施していく計画だとしている。