NTT印刷がバックオフィス業務をオンラインでサポートするサービスとして、「カチアルサポート」を提供している。同サービスは経理、営業事務などの業務をアウトソースできるだけでなく、業務の棚卸しにつながることから、業種・企業規模に関係なく、さまざまな企業の人手不足を解決できることが強みになってるという。
同社で「カチアルサポート」を担当する、データビジネス部 DX・BPO推進室 企画・販売戦略担当 主査 福島哲氏、データビジネス部 DX・BPO推進室 企画・販売戦略担当 土地治美氏に、同サービスの内容や狙いについて伺った。
人手不足に悩む顧客の声から生まれた「カチアルサポート」
「カチアルサポート」は、NTT印刷が2022年8月に発表したオンラインアシスタントサービス。経理、営業事務、人事、秘書、Webサイト更新や資料作成などの多彩なバックオフィス業務を、同社が厳選したプロ人材に任せることができるアウトソーシングサービスの一種だ。
例えば、営業事務の場合、見積書・請求書の作成やデータ入力に始まり、マーケティング業務や営業資料の作成までカバーする。また、経理業務の場合、請求書・領収書発行から紙伝票の電子化まで行う。
契約すると専属の窓口が用意され、そこに依頼をすると必要なスキルを持つ人材が手配されるという仕組みだ。窓口とは、Slack、Chatworkなどのビジネスチャットやメールでやりとりをする。
セキュリティ対策はもちろん講じられているが、追求したのは便利さ、手軽さ。プランは時間単位で用意されているので、必要な時に必要な業務を必要な分だけ頼むことができる。
契約した時間内なら複数の業務も柔軟に依頼可能
土地氏は、「バックオフィス系の業務でこんなことができないかという相談をいただければ対応できるので、困った時に手軽に利用できます」と話す。派遣サービスの場合、特定の業務に対して契約することになるが、カチアルサポートでは、経理で使い始めて営業事務も頼むといった使い方も可能だ。
「決まった契約期間において、月初には忙しい業務を頼み、突発的にデータ入力が必要になるとそれを頼み、月末は経理業務を頼むという使い方をされるお客様もいらっしゃいます。依頼する業務が固定ではないという点で、画期的なサービスだと自負しています」と土地氏。
例えば、月30時間プランで「経理事務」を依頼したある顧客は、請求書の仕分けに12時間、請求書データ化に9時間、経理システム入力に6時間、書類返送に3時間という使い方をしているという。オンラインアシスタントサービスと銘打ってはいるが、請求書を作るだけでなく、作成した請求書を発送するといったオフラインの仕事も一部受けているそうだ。
経理部門は紙を用いた業務が多いため、テレワークが難しいという話を聞くが、「カチアルサポート」を活用すれば、そうした課題もクリアできるといえる。
BPO事業を手掛けてきた同社が、カチアルサポートを開発・提供するに至った背景には、顧客側が抱える人手不足という問題がある。この点について、福島氏は次のように説明する。
「BPOを通じてデータ利活用、業務改善、DXなどを支援していますが、多くのお客様が人手不足に悩んでいらっしゃいます。人手が足りずに困っているときに、データ利活用やDXを進めるのはハードルが高い。そこで、バックオフィスを対象に、手軽で安価、かつ付加価値の高いサービスを提供できないかと考えて、『カチアルサポート』を設計しました」
業務の棚卸しのきっかけに
開始から半年、すでに顧客は100社を超えるなど好調だ。「業種や規模を問わず、多くの引き合いをいただいています」と福島氏。依頼される業務は経理、営業事務などが多いそうだ。
そして福島氏は、カチアルサポートが、単に業務を外部に依頼するだけでなく、「業務の見直しの入り口になっている」と語る。
「経理の主たる業務は会社の業務報告を作成する部分であって、毎日の入金確認や請求書の管理ではありません。利益への貢献度が低いノンコアのバックオフィス業務をカチアルサポートに任せることで、お客様はコア業務に集中できる、これが大きなメリットになっています」(福島氏)
実際に、カチアルサポートの導入をきっかけに、業務の棚卸しや整理を進めている顧客も多いという。「オンラインサービスを入れることで、事務業務の効率が上がるだけでなく、業務改善を図って、人材が適切な配置になっているかどうかを見直すことができるという点でも、喜ばれています」と土地氏は話す。
そうかと思えば、1人で業務にあたる人が、週に1回ToDoの確認を一緒にやるために利用したり、「カチアルサポート」を利用する中で業務改善に気づくといった使い方も出てきているという。
出だしは好調だが、課題も感じている。「オンラインアシスタントサービスの知名度はまだ低く、また、知っていたとしてもオンラインで業務を依頼することに抵抗がある方もいらっしゃる」と福島氏。オンラインアシスタントサービスの認知普及に努めながら、セキュリティや品質をより訴求していきたいとのことだ。
今後は各業界の知識を深めながら、要望が多いというシステムのサポートなどのテクニカルな支援にもメニューを広げていくことにも着手している。
「パートナーも含めてNTTグループのお客様とのつながりを活用し、都市部はもちろん、全国のお客様に活用していただきたい」と、福島氏は今後の展望を語っていた。