旭化成とNECは3月28日、「秘密計算技術」を活用し、企業間で共同開発を行う際にデータを秘匿したまま連携できる分析基盤を構築したと発表した。これにより、旭化成は秘密情報を扱うことが多い材料分野の製品開発において、原料サプライヤーや加工メーカー、部品メーカーなどの企業間でのデータ連携が可能となる。

同分析基盤は、NECが保有する秘密計算技術のうち、ハードウェアを利用した方式(TEE: Trusted Execution Environment)を活用し構築している。同方式は、分析にかかる時間が比較的短いことに加えて、「Python(パイソン)」で記述された既存の分析アプリケーションを、基本的にはそのまま秘匿化して動作させることができるという。そのため、難解な秘密計算のプログラミングが不要になる。

  • 秘密計算技術を活用した企業間のデータ連携・分析基盤の活用イメージ

    秘密計算技術を活用した企業間のデータ連携・分析基盤の活用イメージ

同分析基盤を活用することにより、原料情報や加工条件、評価情報といった重要なデータを暗号化したまま統合することができる。旭化成はそのデータを基に、機械学習などを応用して材料開発の効率を高める「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」の技術を応用して、材料開発を高度化するねらいだ。

旭化成は蓄エネルギー領域の研究開発において、同分析基盤の活用を開始したという。今後は同社の顧客との協業に向けた取り組みを推進していく予定だ。将来的には、材料開発だけでなく生産計画の最適化など、他分野での活用や非競争領域における同業他社との連携も視野に入れているという。