京セラは2023年2月9日・10日に、オンラインイベント「KYOCERA BIZ TECH FORUM 2023」を開催した。「技術の力で、未来の一歩を。」というメッセージを核とした同イベントでは、谷本秀夫社長の基調講演や各事業のプレゼンテーションに加え、各界の著名人を迎えたパネルディスカッションも行われた。

  • 2023年2月9日・10日に行われた「KYOCERA BIZ TECH FORUM 2023」は、京セラ初となる全社規模のオンラインイベントだ

    2023年2月9日・10日に行われた「KYOCERA BIZ TECH FORUM 2023」は、京セラ初となる全社規模のオンラインイベントだ(出典:京セラ)

同社にとって、全社規模でのオンラインイベントは初めての試み。その開催に至った理由には、ものづくり企業として幅広く事業を展開する京セラが、さらなる成長を遂げるための大きな"方向転換"があったという。

またイベントの開催にあたっては、同社広報室の担当部署とデジタルマーケティング担当部署のそれぞれから代表者が1人ずつ選ばれ、議論を重ねながら企画を作り上げたとのこと。今回は、この前例のないイベントを広報室から先導した鍜治尭明(かじ たかあき)氏、そしてイベントを主導した両部署の責任者を兼務する北垣良介(きたがき りょうすけ)氏に、その狙いや手ごたえを伺った。

  • 同イベントを主導した2部署の責任者を兼務する北垣良介氏(左)と、イベント開催にあたって広報室の代表者を務めた鍜治尭明氏(右)にお話を伺った

    同イベントを主導した2部署の責任者を兼務する北垣良介氏(左)と、イベント開催にあたって広報室の代表者を務めた鍜治尭明氏(右)にお話を伺った

3つのプログラムからなる「KYOCERA BIZ TECH FORUM 2023」

京セラ初の全社オンラインイベントであるKYOCERA BIZ TECH FORUM 2023は、先述した通り、基調講演・ビジネスプレゼンテーション・パネルディスカッションという3つのプログラムで構成される。

谷本秀夫社長による基調講演

社長の谷本秀夫氏による基調講演では、未来への展望や企業としての関わり方、同社の事業展開、そして今後の注力市場について語られている。また講演の最後には、「社会課題の解決は、京セラだけで実現できるものではない」と話し、産官学が連携して今後の解決策を見出していく姿勢を強調する。

営業担当が製品を語るビジネスプレゼンテーション

ビジネスプレゼンテーションでは、社内のさまざまな事業部が提供する製品やソリューションについて紹介。今回は7つの事業部が参加し、GaNレーザやセラミックパッケージ技術といった製品に関する紹介を行った。また、社内のDX事例を取り上げながら"製造業DX"について説明を行うプレゼンテーションには、多くの注目が集まったという。

このプレゼンテーションの特徴には、担当事業部の営業担当が登壇している点がある。日常的に顧客に向けて製品説明を行い、それぞれの課題に触れる担当者が語ることで、課題解決により近いプレゼンテーションになっているとする。このイベントのようなマーケティング活動は、営業担当にとって本来のKPIとは異なるため、各事業部への説得や登壇者の決定に苦労したというが、それでも地道な説得を重ねて、7つの事業部門の参加までこぎつけたとのことだ。

著名人も登壇したパネルディスカッション

ゲストスピーカーと京セラの担当者が、それぞれのテーマについて対談するパネルディスカッションでは、5つのテーマを核としながら将来に関する展望が語られた。

イベントを視聴した参加者へのアンケートでは、このパネルディスカッションの中で、「ロボティクスとAI」と銘打たれたセッションへの反響が大きかったとのこと。多品種少量生産の現場や小売業など、未だにロボットの導入が進んでいない産業に関する自動化の将来について、金属加工などまさに多品種少量生産の自動化を推進するHILLTOPの山本勇輝社長、アーティストで東京藝術大学デザイン科の准教授を務めるスプツニ子!氏、そして京セラロボティクス事業部の森田隆三事業部長が議論を繰り広げた。

また、北垣氏が「京セラならではのプログラム」だと強調するのが、経営哲学をテーマにしたディスカッションだ。一般社員も登壇して、企業全体での哲学に触れるその内容について、「確立された経営哲学をテーマに据えられるのは京セラの強みだと思う」と北垣氏は話す。最先端技術に関するセッションが並ぶ中で、あえて経営哲学を1つの軸として重視したのは、そういった狙いがあったのだという。

  • 北垣氏が「事業に関するプレゼンテーションはどの会社もやっているが、経営理念を1つのテーマに据えることができるのは京セラの強みだ」と語るパネルディスカッションの様子

    北垣氏が「事業に関するプレゼンテーションはどの会社もやっているが、経営理念を1つのテーマに据えることができるのは京セラの強みだ」と語るパネルディスカッションの様子(出典:京セラ)